地球温暖化の抑制のために、森林の光合成による二酸化炭素吸収能力に寄せられる期待は大きく、この気候変動時代において、森林の光合成速度の推定は益々重要度が高まっている。しかし、光の強さだけを考えて一枚の葉を対象とする光合成速度の推定から、自然環境下にあり様々な環境要因が影響する、しかも、森林という巨大な生物集合体のそれに至るには、必要とする知識・考え方にさらなる発展が必要である。本ゼミナールの前半では、自然環境下での森林の光合成速度を推定するための知識を論文読解と解説講義から学び、実際に数理モデルを表計算ソフト(Excel)上に構築、シミュレーションを実行の上、結果の解析と発表・討論を行う。 2.駒場キャンパスの生物多様性を知る 森林は生物多様性が非常に高く、そこに存在する生物間の関係は複雑である。この生物多様性及び生物間の関係を明らかにすることは、森林生態系の機能や安定性を理解する上で重要である。本ゼミナールの後半では、生態系を研究する手法を理解することを目的として、森林よりも単純な系である駒場キャンパス内の生物を対象とした野外調査を行い、得られた結果の解析と発表、討論を行う。 初年次ゼミナール理科の評価方法によって評価する。 -疾患の分子病態から グループ4 1年 理一(23,26,28-29,33,36-37)理二三(12,16,24) 初年次ゼミナール理科 31556 火 4 授業の目標・概要 1.自然環境下での森林の光合成を考える 成績評価方法 授業のキーワード 森林による二酸化炭素吸収、樹木個体による光合成、数理モデル、生物多様性、生物間相互作用 教科書 ガイダンス 教科書は使用しない。/Will not use textbook 書名 著者(訳者) 出版社 ISBN その他 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 31557 火 4 授業の目標・概要 疾患の発症メカニズムを分子レベルで解明することは、予防・診断・治療法の開発につながる重要なプロセスです。本講義では、遺伝的多様性、タンパク質代謝制御、神経筋接合部を3つのテーマを通じて、3名の担当教官から疾患克服を目指した医科学研究の最前線について学びます。与えられたテーマについて自ら調査し、他者に分かりやすく発表する機会を多く設けることで、情報収集・論理的思考・プレゼンテーションのスキルを養い、医学研究の理解を深めます。 「遺伝的多様性と遺伝統計学(担当教官:熊坂夏彦)」 人のゲノムの違い(遺伝的多様性)は、体格や容姿だけでなく、喫煙量や飲酒量などの生活習慣、そして病気のなりやすさなど、私達のありとあらゆる表現型の違いを生み出しています。2003年にヒトのゲノム配列が決定されたことで、私達は初めてゲノムの地図を手にしました。それから20年が経ち、私達はヒトの身長を遺伝的に決定する遺伝的多様性のほとんどの場所を知ることになりました。この講義では、人の遺伝的多様性がどのように私たち自身を形作っているのか、その秘密を解き明かす学問である「遺伝統計学」について学びます。さらに、遺伝統計学を活用して病気の原因を特定し、新たな薬を開発し、一人ひとりのDNA配列に基づいたオーダーメイド医療を実現する方法について議論し、発表していただきます。 「細胞内タンパク質分解系と疾患・創薬(担当教官:佐伯泰)」 細胞内のタンパク質分解を担うシステムとして、ユビキチン・プロテアソーム系とオートファジーー・リソソーム系が知られております。近年、これらのシステムの破綻が、がん、神経変性疾患、免疫疾患など、多岐にわたる疾患の発症・進展に関与することが明らかになってきました。さらに、これらのタンパク質分解経路を利用した新たな創薬手法の開発も盛んになっております。本講義では、細胞内タンパク質分解という生命現象の基本的なメカニズムを理解し、それらがどのように疾患に関わっているかを学ぶとともに、タンパク質分解を標的とした創薬戦略の将来展望について議論します。 「神経筋接合部の基礎研究に基づく疾患の発見と予防・治療法開発について学ぶ(担当教官:山梨裕司)」 我々の呼吸を含む運動機能は運動神経による骨格筋収縮の緻密な制御によって支えられており、その制御には運動神経の軸索末端と筋線維を結ぶ神経筋接合部(NMJ:neuromuscular junction)と呼ばれる化学シナプスが必須の役割を担っています。事実、NMJの形成・機能不全は筋無力症と呼ばれる、易疲労性の筋力低下を特徴とする神経筋疾患を引き起こします。さらに、近年の研究により、NMJの形成不全が運動神経変性疾患や加齢性の筋力低下にも関連することが明らかとなり、多様な運動機能障害について、NMJを標的とする予防・治療法開発が進められています。本講義ではNMJの基礎研究に基づく筋無力症の発見と予防・治療法開発の実例について学ぶと共に、関連する様々な課題について説明・議論する場を提供します。 開講場所は原則駒場Iキャンパスです。第3回のみ、東京大学医科学研究所の見学会を行い ます。 初年次ゼミナール理科の評価方法によって評価します。 各講義と、最終週に発表の機会があります。 成績評価方法 授業のキーワード 問題発見・解決型、タンパク質分解薬、遺伝的多様性、遺伝統計学、オーダーメイド医療、神経筋接合部 教科書 ガイダンス 教科書は使用しない。/Will not use textbook 書名 著者(訳者) 出版社 ISBN その他 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 森林生態系の科学 疾患克服を目指した医科学研究の実際 予防、診断、治療法を考える 熊谷 朝臣、池田 紘士 南谷 泰仁、佐伯 泰、 熊坂 夏彦、山梨 裕司 農学部 医科学研究所
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