2025Sシラバス
60/486

大学では「問い」の「答え」を探求する前にまず「問い」自体を自分で見つける必要があるという点を理解し、学ぶ姿勢の根本的な転換を目指す。授業を通じて「問い」の立て方、「理論」についての考え方、「研究方法」の設定の仕方、学術資料の収集の仕方、議論の根拠の導き方、論述の組み立て方などのアカデミックスキルに触れ、それらを習得する。また、自分が取り組む「問い」が学術的・社会的に意義のある「問い」であることを主張する必要性を理解する。 「問い」の「答え」を導くに当たって必要な、先行研究の理解とオリジナリティの主張の方法(剽窃の防止を含む)、議論と根拠の関係などといったより基礎的な作法および図書館などの研究リソースの利用方法を、第2回の合同授業で学ぶ。 【この授業の目標・概要】 大学生になり、長期休みに観光へ出かけるのを楽しみにしている人も多いかもしれません。日々みなさんが学んでいる、そして多くの人が住まい、働いている「東京」という街も、見方を変えれば「観光地」です。2023年には1900万人を超える海外からの観光客が訪れたとされ、2024年にはある調査会社が発表した「世界の観光都市ランキング」の第3位にランクインしました。この授業では、東京と観光という身近な存在を通して、研究の幅広さや面白さを学びます。 人やモノ、情報が日々大量に素早く行き交うようになった世界の中で、観光の存在感は高まり続けています。例えば、日本では2007年に「観光立国推進基本法」が定められ、重要な産業として位置づけられています。一方で、コロナ禍や震災などの非常事態を通じ、余暇や楽しみであるはずの観光は「不要不急」の行動として制限されました。自然条件や経済的条件、歴史や文化、時に社会問題とも結びついている観光は、複雑な現代の世界を象徴しているものでもあります。 担当者が専門としている人文地理学は、様々な現象を事例としながら、人間と空間の関わり合いについて、色々な角度で考えてきた学問分野です。しかし、観光の研究が盛んになったのは1990年代ごろからであり、社会学や文化人類学、歴史学など、様々な隣接領域と接近し、交わりながら、今なお研究の余地は広がり続けています。本授業の第3回と第4回で、導入講義を実施し、これらの観光研究の学術的な経緯や重要概念を学びます。続いて第5回から第8回までは、参加者自身の興味関心に応じて、先行研究のレビューや議論を行い、観光を研究する視座や学術的な論じ方について学びます。 第9回では、担当教員とTAが、キャンパス周辺を対象として小規模なフィールドワークを実施します。これまで机上で学んできた知識が、実際の空間でどのように活きるのかを体験し、小論文の計画や構想につなげます。 第10回以降は、各自で観光とともに「東京」を考えるテーマを設定し、小論文の計画や進捗について報告します。随時相談を重ねながら、教員・TAだけでなく、参加者間でも意見交換や議論を実施し、アカデミック・ライティングの基礎を身に付けます。 そもそも「東京」とはどこなのか。何を観るために、何をするために、人々は東京を訪れ、どんな体験を、どんな感情を、どんなモノを持ち帰るのか。それらはどんな言葉で語られ、私たちはどんな言葉で語るのか。観光を一つの例として、人やモノ、情報やお金の流れの中で作られては変化し続ける東京という場所について考えることを目指します。 【学術分野】人文地理学 【授業形態】ディシプリン型 フィールド型 出席、報告および議論への貢献等の平常点と小論文とで判断する。 平常点に関わる課題として、授業に対する振り返りシートへの記入を求める場合がある。 ・出席+平常点 30% ・小論文 70% 【各課題の採点基準】 ・出席(1点×11回=11点) 基本的に全ての授業に出席することが望ましいが、特に第10回以降の小論文の計画発表は必ず参加すること。急遽予定等が入った場合は順序の入れ替えなどを相談すること。 ・平常点(2点×振り返りシート6回=12点、1点×議論への参加度合い(7件法[非常に参加している、かなり参加 初年次ゼミナール文科 31658 金 3 授業の目標・概要 【共通目標】 成績評価方法 授業のキーワード 観光、地理、場所、フィールドワーク 教科書 ガイダンス 教科書は使用しない。/Will not use textbook 書名 著者(訳者) 出版社 ISBN その他 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 観光とともに「東京」を考える 住吉 康大 人文地理学

元のページ  ../index.html#60

このブックを見る