大学では「問い」の「答え」を探求する前にまず「問い」自体を自分で見つける必要があるという点を理解し、学ぶ姿勢の根本的な転換を目指す。授業を通じて「問い」の立て方、「理論」についての考え方、「研究方法」の設定の仕方、学術資料の収集の仕方、議論の根拠の導き方、論述の組み立て方などのアカデミックスキルに触れ、それらを習得する。また、自分が取り組む「問い」が学術的・社会的に意義のある「問い」であることを主張する必要性を理解する。 「問い」の「答え」を導くに当たって必要な、先行研究の理解とオリジナリティの主張の方法(剽窃の防止を含む)、議論と根拠の関係などといったより基礎的な作法および図書館などの研究リソースの利用方法を、第2回の合同授業で学ぶ。 【この授業の目標・概要】 この授業は、歴史的・政治的人物に関する評伝を読み込み、実際に書いてみることを通じて、歴史や政治の環境と人々の行動の関係について深く考えることを目指します。比較政治(史)や国際関係(史)における指導者(アクター)と制度を分析する基礎を作ることを期待しています。 こどものころから、漫画や活字の偉人伝や人物伝を読んだ経験がない方は珍しいのではないでしょうか。そうした伝記は、わたしたちにその人物の立場になって歴史を追体験し、その人物の眼を通じて時代の雰囲気を活き活きと味わせてくれます。 政治家や政治の舞台で活躍したさまざまな人物に関する評伝(Biography/Critical Biography)は、人物の個人的な軌跡を知るだけでなく、人物の背後にある歴史や政治の状況を理解するための格好の素材です。同世代や後世の著者が当の政治家や歴史的人物に対して、評価を交えながら説明を加えていく評伝は、政治家自身が自らについて語る自伝(Autobiography)とも、著作家が当の人物の半生を説明する伝記(Biography)とも、評価をあえて押し出しているという点で異なっています。それゆえ、優れた評伝は、人物を取り巻く時代や制度の文脈を適切に理解した、優れた歴史研究や政治学研究無しでは生まれません。評伝それ自体が、形式を整えれば、研究論文に値します。 この授業では、まず、国内外の政治家やについて、過去・現代の名作とされる評伝を読み、登場人物の眼を通じて歴史や現代の時代を味わいながら、人物と政治や社会状況との関係をどのように捉えるべきかを考えていきます。登場する人物の活躍した時代や地域は、数世紀前から同時代まで、日本はもちろんアジアやヨーロッパなどです。登場人物も、政治家そのものと言える人から、普通は政治家に入らない人まで、多岐に渡ります。このような多様な素材にふれることで、地域や時代を横断して比較し、人と制度や環境の関係を、今までより精確に理解することができるでしょう。 続いて、皆さんは、自分自身で1人の人物を選んで、評伝を書いてもらいます。構想を練り、構成を作り、執筆する作業を段階を分けて行い、それぞれの段階で発表・ディスカッション(と担当教員のコメント・添削)を行います。最後に、原稿を提出していただいた方の評伝を集めて、評伝集としてゼミ論文集を作成して完成です。 本授業での参加を通じて、政治家の評伝を通じた時代や文脈の理解を目指します。さらに、評伝の読解・討論や執筆の作業は、政治学や歴史学など幅広い分野におけるアクターと制度・環境のせめぎ合いを捉える普遍的な問題に貢献するはずです。もちろん、授業準備や発表・論文執筆など、アカデミック・スキルズの訓練としても、有用であることを保証します。 色々書きましたが、とにかく人物を入口にして、制度とアクターの関係、民主主義と権威主義の比較などを考え、歴史や政治の奥深さを学んでいきましょう。 【学術分野】法・政治 【授業形態】ディシプリン型 フィールド型 文献批評型 出席、報告および議論への貢献等の平常点と小論文とで判断する。 下記の要素を、ぞれぞれ1/4考慮する予定です。 ①事前課題の提出・内容 ②クラス内でのプレゼンテーション ③クラス内での議論への貢献 ④レポート 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 評伝を読む・評伝を書く~政治家評伝を通じた初年次ゼミナール文科 31653 金 1 授業の目標・概要 【共通目標】 成績評価方法 授業のキーワード 比較政治・政治史、国際関係・関係史、政治家、政治制度、民主主義、権威主義 教科書 次の教科書を使用する。/Will use the following textbook 書名 著者(訳者) 清水唯一朗/加藤徹/板橋拓己 出版社 ISBN その他 ガイダンス 政治史・政治学の探究 伊藤 武 法・政治 Reading and Writing Biography of politicians/political figures 『原敬: 「平民宰相」の虚像と実像』(2021)/『西太后 大清帝国最後の光芒』(2005)/『アデナウアー 現代ドイツを創った政治家』(2014) 中公新書 978-4-12-102660-6/978-4-12-101812-0/978-4-12-102266-0 入手しやすい新書です。電子版でも可ですので、クラス初回の第3回授業までに入手し持参してください。
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