2025Sシラバス
44/486

大学では「問い」の「答え」を探求する前にまず「問い」自体を自分で見つける必要があるという点を理解し、学ぶ姿勢の根本的な転換を目指す。授業を通じて「問い」の立て方、「理論」についての考え方、「研究方法」の設定の仕方、学術資料の収集の仕方、議論の根拠の導き方、論述の組み立て方などのアカデミックスキルに触れ、それらを習得する。また、自分が取り組む「問い」が学術的・社会的に意義のある「問い」であることを主張する必要性を理解する。 「問い」の「答え」を導くに当たって必要な、先行研究の理解とオリジナリティの主張の方法(剽窃の防止を含む)、議論と根拠の関係などといったより基礎的な作法および図書館などの研究リソースの利用方法を、第2回の合同授業で学ぶ。 【この授業の目標・概要】 入学おめでとう。新たな学びに胸ふくらませているときに、もうおさらばしたはずの高校の教科書、それも漢文のを読み直すとは、なんと無粋なと思うだろうが、別に漢文の授業をするわけではない。教科書をあえてとりあげるのは、高校までの学びと大学での学びとの違いをこれほどよく示すものはないからだ。 高校までの教科書は、国が定めた学習指導要領に沿って書くことが求められ、検定まである。大学で教科書を使うのは入門的な授業に限られ、むしろ教材として整えられたものではない、なまの素材が突き出される。訓点も句読点もない木版本を読みこなす先輩が神に見えたりするが、神ならぬ人の作った言語であって、読解の技は別に伝授しよう。 高校の漢文教科書には、まるではじめから決まっているかのように返り点や送り仮名やふりがながついていて、親切な脚注まである。しかし、教科書の定番といわれる有名な作品でも、解釈について論争があったり、それどころか文字が何箇所か違っていたりするのは、決して珍しいことではない。教科書の編者は、それを踏まえた上で、自らの見識によって高校生のための本文を作成しているのである。従って、同じ作品でも教科書によって異なる場合は時にある。それはどれかが正しく他は間違いというものではなく、学界においても見解が分かれているところなのである。 そうとわかれば、教科書とはもうおさらばして、それぞれの説を主張する論文を読んでみよう。どの説が正しいかを決めるのは、直接の目標ではない。論文と感想文はどう違うのか、文学を研究するとはどういうことなのかといったことを考えるのが、第一の目標である。そして、そこから得た問題(もはや漢文と関係なくてもよい)について、自ら資料を集めて考え―それは既に研究に一歩足を踏み入れたことになる―文章にまとめることが、第二の目標になる。さらに、それを受講者相互で批評することを行いたい。教員に教えられるのでなく、自ら学ぶこと、相互に学び合うことを、態度として身につけてほしいと願うからで、それが第三の、究極の目標である。 【学術分野】国文・漢文学 【授業形態】文献批評型とディシプリン型の折衷。学生各自のテーマの立て方によって、一つのテキストにがっつり取り組むことも、ひろく文学、言語、国語教育などの諸問題に重点を置いて考えることも可能である。 出席、報告および議論への貢献等の平常点と小論文とで判断する。 もう使わない高校の国語の教科書を、もう一度初年次ゼミナール文科 31618 火 3 授業の目標・概要 【共通目標】 成績評価方法 授業のキーワード 漢詩、文学、古典、中国、国語、批評 教科書 ガイダンス 教科書は使用しない。/Will not use textbook 書名 著者(訳者) 出版社 ISBN その他 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 だけ見直してみるところから始めよう 谷口 洋 国文・漢文学 グループ3 1年 文一二(8,12,14,17)文三(10,12,14)

元のページ  ../index.html#44

このブックを見る