大学では「問い」の「答え」を探求する前にまず「問い」自体を自分で見つける必要があるという点を理解し、学ぶ姿勢の根本的な転換を目指す。授業を通じて「問い」の立て方、「理論」についての考え方、「研究方法」の設定の仕方、学術資料の収集の仕方、議論の根拠の導き方、論述の組み立て方などのアカデミックスキルに触れ、それらを習得する。また、自分が取り組む「問い」が学術的・社会的に意義のある「問い」であることを主張する必要性を理解する。 「問い」の「答え」を導くに当たって必要な、先行研究の理解とオリジナリティの主張の方法(剽窃の防止を含む)、議論と根拠の関係などといったより基礎的な作法および図書館などの研究リソースの利用方法を、第2回の合同授業で学ぶ。 【この授業の目標・概要】 高校までの学習は、教科書や参考書の内容を「正しい」ものとして受け止め、身に着けていくことが基本であったが、大学の学びでも、その原則は変わらない。扱うテーマや対象に応じて、教科書やそれに相当する当該分野の基礎的文献を精読し、そこから自分なりの「問い」を見つけることが研究の第一歩である。しかし、その「第一歩」を踏み出すことが、きわめて困難な分野・研究対象も数多く存在する。この授業で扱う東方キリスト教もその一つである。 キリスト教は、教義や典礼形式の違い、歴史的経緯から生じた分裂によって、カトリックやプロテスタント諸派などいくつかの宗派に分かれることは、よく知られている。しかし、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)とその周辺民族(スラヴ人など)に広まったキリスト教の伝統を受け継ぐ「東方正教会(ギリシア正教会)」については、辛うじて世界史の教科書で学ぶ機会がある程度である。2~4世紀のキリスト教拡大期に、ローマ帝国の辺境、あるいは東方国境をさらに越えてペルシアやコーカサスに広まったキリスト教共同体を母体に、中東やコーカサス、南アジアといった地域で発展してきた「東方諸教会」に至っては、教科書や百科事典でもほとんど説明がなされていないか、仮に説明があったとしてもその内容が不正確であることがほとんどである。 そのような「教科書にも載っていない」「教科書すら信用できない」「教科書や基礎文献が存在しない」ほどに情報量が少ない対象について、正しい情報を収集し、そしてその情報の正確性を検証するためのスキルを身に着けることが、この授業の目標である。東方キリスト教(あるいはその中の特定の教会)に関心がある学生はもちろん、日本語の基礎文献や研究論文がほぼ存在しないようなマイナーな研究対象に挑みたいというチャレンジ精神あふれる学生の参加を歓迎する。 【学術分野】哲学・宗教学 【授業形態】ディシプリン型 出席、報告および議論への貢献等の平常点と小論文とで判断する。 教科書が教えないキリスト教:東方正教会と初年次ゼミナール文科 31612 月 4 授業の目標・概要 【共通目標】 成績評価方法 授業のキーワード 宗教学、宗教史、キリスト教、東方キリスト教、東方正教会 教科書 ガイダンス 教科書は使用しない。/Will not use textbook 書名 著者(訳者) 出版社 ISBN その他 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 東方キリスト諸教会 浜田 華練 ロシア語
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