時間割コード 40287 S2 授業の目標概要 開講 森に学ぶ(ふらの) 北海道の大地に学ぶ ■全学体験ゼミナールを履修する場合は、必ずUTASでシラバスを参照し、本冊子には掲載されていない詳細な授業内容等を確認したうえで、履修登録を行ってください。 【注意】この授業は主題科目単位を埋め合わせる目的には不向きです。いわゆる楽単ではありません。結構大変かも知れませんが、楽しく学べるゼミです。 【注意】この授業は開講日程の都合上、成績が所定の確認日より後に公開される可能性があります。主題科目の単位が足りない人には不向きです。 【注意】この体験ゼミは森林・林業を意識するために現地に足を運ぶスタイルをとるため、対面受講できる学生のみが受講することができます。オンライン受講はできないのでご注意ください。 【注意】この授業は高校時代に山岳部やワンダーフォーゲル部に所属した人を対象とするものではありません。山野に興味あるけど、山岳サークルはちょっと敷居が高いかなと思う人に、安全に山を楽しんでもらう機会と、同時に山や森林で営まれる林業を意識し考えてもらう機会を作るために実施する講義です。人並みの体力は必要ですが、山歩きとしては初級向けですので誰でも参加できます。 伊豆で実施してきたゼミでは伝えきれない、自然を感じる部分を重点的に本ゼミにてお届けしたいと思っています。伊豆ゼミとセットでの履修をお奨めします。 北海道・富良野と聞いて何を思い浮かべるでしょう。東大北海道演習林!と答える人はもしかして演習林通? もちろんそういう答えを期待している訳ではありません。でも、この体験ゼミ受講後、それはきっと強く印象に残ることでしょう(と書くのは簡単)。でもこのゼミではその北海道演習林にすぐには行きません。演習林にほど近い山を歩くことから始まります。十勝山系富良野岳。(ずっと演習林を見たいという方には、もうひとつの冬の体験ゼミをお奨めします。)≪富良野岳(ふらのだけ)は、北海道中央部にある山である。標高1,912m、大雪山の南西部から連なる十勝岳連峰の最南端に位置する。火山ではあるが、山麓の安政火口を除き、古い時代に活動を終えたと考えられる。そのため、安政火口近辺を除いて全山高山植物が豊富で、特に山頂部は夏の時期は広大なお花畑が広がる。隣接する十勝岳が有史以来の激しい噴火のため、山頂部に植物に乏しいのと対照的である。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』≫ 富良野岳はこれまでに登った数ある北海道の山の中でもお気に入りの一つです。自然、自然と言うけれど、手つかずの自然など日本のどこにもほとんど残っていません。北海道の山上も例外ではありませんが、大自然を感じるにはうってつけの場所です。いつ行ってもその大きさに圧倒されます。大自然のただ中に身を置いて、人間の小ささを感じてみよう。そして、自分が押しつぶされそうになっている日頃の重大問題のことを思ってみよう。何かしら道が開けるかも知れませんよ。このゼミでは、少なからぬ百名山登山家に見受けられるような、ただ頂上に立つことを主目的とするようなせわしない登り方はしません。ゆっくりと、足下の植物たちを観察しながら、空気を、日差しを、そして歩くことそれ自体を楽しみながら歩くので、とくに健脚でなくても大丈夫。大自然を十分に満喫したそのあとに、今度は人が向きあう森「東大北海道演習林」に向きあってもらいます。そこでは人が自然に向き合う営み、すなわち林業という第一次産業を意識してみましょう。大方の日本人は日本は先進国だと思っていて、先進国とは第一次産業を捨て高次産業にシフトするものだと思っている節がないでしょうか。本当にそうですか?自然の中にどっぷりと身を置いたことで、内にちょっと変化が起った君たちには、たっぷりとその様なことを考えてもらいたい。答え(正解)は出ないかも知れません。何が正解であるかが重要なのではなくて、君達がどれだけ向き合うことができるかが重要なのだと思います。よく考えたあとで、仕上げにもう一度大自然の中に身を置いていただきます。 ところで、日本の国土は7割近くが森林に覆われていることをあなたは当然ご存じのはずですが、その7割の面積におよぶ森林をどの様に管理するべきか、あなたは考えてみたことはありますか? 山林のことは林業関係者に任せておけば良いでしょうか? 自分はそういう方面に就業しないから考えなくても良いのでしょうか? 人任せ、あるいは誰かの考えに盲従していても、国土が取り返しのつかないことになる心配はないと思えますか? いま現在、日本において、その肝心の林業はちゃんと回っているのでしょうか。 日本の林業は外国に比べてコスト高であるため、儲けを出しにくいと言われています。儲からない産業には資本が投下されにくい(資本主義から見放される)。すべてを資本主義的な価値観で判断するのであれば、日本の山林は放置するのが最も合理的であるということになってしまいます。しかし、その判断はあくまでも資本を投下して、その投下に見合った回収を期待できるかどうかという価値観によるものに過ぎません。現状を放置すると、例えば獣が増えて植生を壊滅させます。植生を失うと、豊かであった土壌が簡単に流亡することになります。土壌の流亡は規模を増したときには、大規模に近辺の植生もろとも土石を下流に押し流すことになります。その様な時、下流の人の営みに甚大な影響が出ないと言い切れるでしょうか。災害ばかりではありません、豊かな土壌を失うことは、生産性を失うことと同義です。一度失えば、それを簡単に取り戻すことはできません。 私たちが生きる現代社会の特徴 私たちが生きる現代社会は、いろいろなプロセスが見えづらい時代であると捉えることができます。構造が複雑になりブラックボックス化が進んでいることもその一因であるでしょう。しかし、仕方がないと片付けてしまえばそれまでです。複雑で忙しい日々を過ごすうちに、思考を節約して簡単に済ませる術を身に着けるという、いわば生活習慣によって観察できない状態・考えられない状態に追い込まれていると捉えることができます。 このゼミでは忙しなく歩くような山歩きはしません。周囲の林や植物をゆっくりと観察できるくらいの歩調で、時に立ち止りながら山林の中に身を置きます。ゆっくりと歩き、時に立ち止ることで見える量も質も大きく異なってきます。ブラックボックスに立ち向かうためにはゆっくりと思考する姿勢が何よりも大切になります(ゼミ中にたまに少しだけ先を急ぐことがあるかも知れません。そんな時はどうぞ笑って許してください)。 このゼミではたっぷりとその様なことを考えてもらいたい。 何か正解を見つけに山歩きをするわけではありません。知れば知るほど難しい問題になるのかも知れませんし、一つだけ正解がある様な問題とは限りません。よく考えてみること、それ自体がこのゼミの目的と言えそうです。 本ゼミで自分が何を感じたか、感じたことを出発点として何を考えたか。そして、それをどの様に自分の行動に落とし込んでいくことができるか。 感じる・考える・行動するのサイクルを回そう。これは伊豆ゼミシリーズにも共通する理念です。本ゼミをきっかけに、これらのゼミを母体とするコミュニティに残り、どう行動するかの部分を大学生の内に何か一つでも実現できたならば、あなたの生き方が大きく変わるかも知れない。 ------------------------------------------------------------------------------- ※このゼミは以下の日程で行われる農学部合同説明会への参加を予定しています。 講義題目 担当教員 鴨田 重裕、尾張 敏章、田中 延亮、平尾 聡秀、鈴木 智之 所属 曜限 単位 農学部 集中 対象 1年 文科 理科 2 2年 文科 理科 全学体験ゼミナール
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