2024Aシラバス
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1年 文科 理科 2年 文科 理科 時間割コード 全学体験ゼミナール 60232 A2 授業の目標概要 開講 森林・林業を意識する低山歩きA_2■全学体験ゼミナールを履修する場合は、必ずUTASでシラバスを参照し、本冊子には掲載されていない詳細な授業内容等を確認したうえで、履修登録を行ってください。 【注意】この体験ゼミは森林・林業を意識するために現地に足を運ぶスタイルをとるため、対面受講できる学生のみが受講することができます。オンライン受講はできないのでご注意ください。逆に、山歩きなら簡単に済むだろうという志望動機の方にも不向きなゼミです。 歩くことは必須ですが、歩いて終わりというゼミではありません。 【注意】このゼミは歩くことが億劫でない限り、誰でも参加することができます。山野に興味ある人に、安全に山を楽しみながら山林の現状を知ってもらうのと同時に、山や森林で営まれる林業を意識し考えてもらうために実施する講義です。人並みの体力は必要ですが、山歩きとしては初級向けですので誰でも参加できます。 ゆっくり歩いて時間を過ごすことを東大生はあまり得意としないように見受けられます。この機会に極上の時間の過ごし方を身につけられてはいかがでしょうか。 【注意】A1ターム「森に学ぶ_林業を意識する低山歩きと森林生態系を意識する奥山歩きA(秩父ゼミ)」、A2タームに「森に学ぶ 森林・林業を意識する低山歩きA(低山ゼミ)」 を行います。これらは別のゼミで重複履修可能です。行き先が異なり、見えて来るものも違うでしょうし、巡らせる志向にも違いが現れると思います。A2タームは厳冬期に当たるので秩父奥山にはお連れせず、低山歩きをすることにします。秩父ゼミでも低山ゼミでも秩父演習林の宿泊施設に泊まり、しっかりと山行を振り返り、各人の意見を交換する機会を設定します。 日本の国土は7割近くが森林に覆われていることをあなたは当然ご存じのはずですが、その7割の面積におよぶ森林をどの様に管理するべきか、あなたは考えてみたことはありますか? 山林のことは林業関係者に任せておけば良いでしょうか? 自分はそういう方面に就業しないから考えなくても良いのでしょうか? 人任せ、あるいは誰かの考えに盲従していても、国土が取り返しのつかないことになる心配はないと思えますか? いま現在、日本において、その肝心の林業はちゃんと回っているのでしょうか。 日本の林業は外国に比べてコスト高であるため、儲けを出しにくいと言われています。儲からない産業には資本が投下されにくい(資本主義から見放される)。すべてを資本主義的な価値観で判断するのであれば、日本の山林は放置するのが最も合理的であるということになりかねません。しかし、その判断はあくまでも資本を投下して、その投下に見合った回収を期待できるかどうかという価値観によるものに過ぎません。現状を放置すると、例えば獣が増えて植生を壊滅させることが起こり得ます。植生を失うと、豊かであった土壌が簡単に流亡することになります。土壌の流亡は規模を増したときには、大規模に近辺の植生もろとも土石を下流に押し流してしまうこともあるでしょう。その様な時、下流の人の営みに甚大な影響が出ないと考えることには無理があります。災害ばかりではありません、豊かな土壌を失うことは、生産性を失うことと同義でです。一度失うと、簡単に取り戻すことはできません。 あなたはハイキングや山野を歩くことが好きでしょうか(好きになりそうでしょうか)。 このゼミでは東京近郊の身近な山と、奥秩父のあまり人が訪れない山を歩きます。林業を意識しながら歩いたり、目の前の森林の来し方行く末を思いながら山を歩いたりする機会を提供することを目的とする講義です。自然豊かな秩父の山の奥の方と、人里に近い低山とを歩き比べてみましょう。どちらが自分好みか、優劣をつける様な価値を持ち込みがちですが、ここは是非両方の良さを知る機会にしていただきたいと思います。(低山ゼミでは奥秩父には参りません) 森林・林業を意識する? 山歩きはとても気持ちいいものです。色々なことをくよくよ考えたり、せわしなく過ごしたりしがちな日常生活から距離をとる。山歩きをしているその瞬間は、日常をすっかり忘れて、ただ歩くことのみに気持ちを向かわせることができます。それはそれでよいものです。 その様に無心に山野を歩くのも好いですが、このゼミでは森林を意識する・林業を意識するという視点を少し持って歩くことを提案します。意識を働かせることで見え方がグッと変わってくることを体験してもらいたい。そこで見えたコト・モノももちろん大切ですが、この体験ゼミでは自分の意識をコントロールすることで見えるコト・モノに変化が生じることを体験し、その体験の意味をしっかりと噛みしめていただきたいのです。このゼミで林業を自分で意識できるようになれば、いろいろなコト・モノに目を向ける姿勢を身につけることになるでしょう。 私たちが生きる現代社会の特徴 私たちが生きる現代社会は、いろいろなプロセスが見えづらい時代であると捉えることができます。構造が複雑になりブラックボックス化が進んでいることがその大きな要因の一つでしょう。しかし、それが原因だから仕方がないと片付けてしまえばそれまでです。複雑で忙しい日々を過ごすうちに、思考を節約して簡単に済ませる術を身に着けるという、いわば生活習慣によって観察できない状態・考えられない状態に追い込まれていると捉えることはできないでしょうか。 このゼミでは忙しなく歩くような山歩きはしません。まわりの植物をゆっくりと観察できるくらいの歩調で、時に立ち止りながら山林の中に身を置きます。ゆっくりと歩き、時に立ち止ることで見える量も質も大きく異なってきます。ブラックボックスに立ち向かうためにはゆっくりと思考する姿勢が何よりも大切になります(ゼミ中にたまに少しだけ先を急ぐことがあるかも知れません。そんな時はどうぞ笑って許してください)。 このゼミではたっぷりとその様なことを考えてもらいたい。 何か正解を見つけに山歩きをするわけではありません。知れば知るほど難しい問題になるのかも知れませんし、一つだけ正解がある様な問題とは限りません。よく考えてみること、それ自体がこのゼミの目的と言えそうです。 手つかずの奥山の様子と資源利用を行う人工林と、両方を意識して歩いてみると何が見えて来るでしょうか。自分が何を感じたか、感じたことを出発点として何を考えたか。そして、それをどの様に自分の行動に落とし込んでいくことができるか。 感じる・考える・行動するのサイクルを回そう。これは伊豆ゼミシリーズにも共通する理念です。本ゼミをきっかけに、これらのゼミを母体とするコミュニティに残り、どう行動するかの部分を大学生の内に何か一つでも実現できたならば、あなたの生き方が大きく変わるかも知れない。 本文中に「自然豊かな秩父の山」と表現しました。自然という響きは豊かな状態を想起すると思います。ここにもステレオタイプが忍び寄ります。 果たして、あなたのそのステレオタイプは正しいのか? 実際に秩父の山をご自身の目で見て確かめてみましょう。 講義題目 森に学ぶ (低山ゼミ) 担当教員 鴨田 重裕、 平尾 聡秀 所属 曜限 単位 農学部 集中 2 対象

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