2024Aシラバス
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全学自由研究ゼミナール 1年 文科 理科 2年 文科 理科 A 時間割コード 51395 授業の目標概要 これまで全学体験ゼミ・全学自由研究ゼミを通して多くの東大生に接する機会をいただき、気づいたことがあります。それは、東大生は効率よくスマートに動きたい思いが強く、スマートに片づけられないことを遠ざけがちであるということ。もちろん、全員がそうだと決めつけるつもりはありません。 そう言われると自分も当てはまるかも知れない。 この機会に何とかしたい。 そう思ったあなたにこそ、このゼミをお奨めしたい。 君の大切なものは何? どういう価値観で生きているの? 社会とどう向き合って生きていくつもりなの? と尋ねると、以下の様に回答する東大生がかなり高い割合でいます。 自分は何がしたいのか分からない・決められない。 それを決めずに入れるから東大を選んだと言い、 大学でやりたいことを今探しているところなので、その問いには直接答えることはできません、と。 しかし、大学に入っても自身の価値観は固まらず、進振り制度に直面しても自分が何をしたいのか、何をすべきなのかということを自分では決められずに、右往左往していないでしょうか。結局自分では決められずに、何となく皆が行きたがる人気の高い学科が良さそうに思えてくる。人気が集中すると点数が足りなかったりする。すると、自分の点数と見⽐べて、自分の点数で行ける中で一番点数が高そうなところを選んだりしてしまう。そのような調子で過ごしていて、果たして自分の頭で考え、判断したことになるのでしょうか? そんな調子で大学生活を過ごして、大学を卒業して社会に出た時に、自律的に判断・行動できる人材に自分を仕立てられていると思えますか? 次に林業について。 本ゼミ主催者は長年、全学体験ゼミ「伊豆に学ぶ」「森に学ぶ」を担当してきました。それらのゼミ中に学生に日本林業の今後の展望を尋ねると、利益を出せない以上は林業が停滞するのはやむを得ないという、大人の意見が返ってくることが多いです。 ってゆーか、そんな答えしか返ってきません! 東大生は、涼しい顔をして大人の意見を言うだけで満足する人が多いと思います。 「林業は難しい」という答えは現時点の状況を端的に表わしているという点で、試験の解答としては正解なのかもしれません。しかし、そう片づけてしまえば、それで仕舞いです。そこからはもう何も新しいことが生まれて来そうにもありません。 東大生の皆さんには、是非、新しい何かを生み出す原点や原動力になっていただきたい。それが「伊豆に学ぶ」や「森に学ぶ」など一連の全学ゼミで皆さんにお伝えしたいことです。 全学体験ゼミ「伊豆に学ぶ」「森に学ぶ」で初めて林業を意識したという方には、もう少しじっくりと向き合っていただく機会を提供したい。そのために用意したのが「日本は林業を放棄してよいのか」と投げかけるこのゼミです。 もちろん、「伊豆に学ぶ」「森に学ぶ」の受講生ばかりではなく、「林業」について考えてみたい、考える必要を感じる、重要なんだろうけどどこか他人ごとになってしまう、という普通の東大生に「皆で考える」場を提供するゼミにしたいと思っています。 それらについて、ただ考えるだけでなく、考えたことを交流させる「場」を本ゼミに実現させて、それを拡大して学園祭にも「場」を作り広げることを一つの具体的な目標とします。 日本は国土面積の7割近くが森林で覆われています。その40%に当たる1,000万haが人工林です。人工林は管理をし続けないと、健全性を保つことができず、また、収穫し、再造林しなければ若返り(更新)が担保されません。それらを担うのが林業です。 人工林を天然林に戻すという考え方もありますが、それを実行するにしても林業が機能しなければ、樹種を変えていくというアクションを起こすことができません。 現在の日本において、林業には全方位に解決しなくてはならない問題があると言っても過言ではありません。林業従事者が少ない問題、森林所有者の問題(500万haにおよぶ森林が私有地であり、所有者の3/4は5ha以下の小面積所有、そして所在不明案件が10万件に及ぶなどの問題)、獣害の問題、コストの問題(大型草本の問題や獣害の問題とも関係する)など、枚挙すれば切りがありません。 そういった問題一つ一つへの理解と、社会全体に理解を広めることが、日本が林業を手放すという選択肢を選択しないために不可欠なことなのでしょう。 企画系自由研究ゼミはこれまで、学園祭においてイノシシピザやイノシシソーセージの燻製を来訪者に提供する取り組みを通して、体験ゼミ「伊豆に学ぶ」で扱ったイノシシ被害の問題が南伊豆地域に存在していることを伝えてきました。 しかし、林業についてじっくりと考えて、発信するという機会は持てずに過ごしてきました。 満を持して、とは申しませんが、この度、垣根を低く設定して林業を考え発信するゼミを立ち上げることにしました。 講義タイトルにはあえて「日本は林業を放棄してよいのか」と書きました。 現代社会は複雑であるがために、私たちを取り巻く様々な関係が希薄になっています。それがために、諸処において自分と対象物・対象事象との繋がりに実感が伴いません。その結果として当事者意識を持てないことになってしまい、それが問題をさらに深刻化させているという、負のスパイラルの見本の様な状態と言えます。「伊豆に学ぶ」「森に学ぶ」ゼミではこれらの気付きを得た学生さんが多数います。 ゼミ中に得たその「感覚」も、そのまま放置すると、あっという間に風化してしまいます。それは実にもったいないことです。 開講 日本は林業を放棄してよいのかS (自由自主の企画系ゼミ) _日本国民は国土面積の25%に及ぶ人工林をどうするつもり? 講義題目 担当教員 鴨田 重裕 所属 農学部 曜限 単位 対象 集中 2

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