2024Aシラバス
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全学自由研究ゼミナール 成績評価方法 教科書 ガイダンス りません。 東大生の皆さんには、是非、新しい何かを生み出す原点や原動力になっていただきたい。それが「伊豆に学ぶ」や「森に学ぶ」など一連の全学ゼミで皆さんにお伝えしたいことです。 全学体験ゼミ「伊豆に学ぶ」「森に学ぶ」で初めて獣害を意識したという方には、もう少しじっくりと向き合っていただく機会を提供したい。そのために用意したのが「日本は林業を放棄してよいのか」と投げかけるこのゼミです。 もちろん、「伊豆に学ぶ」「森に学ぶ」の受講生ばかりではなく、「林業」について考えてみたい、考える必要を感じる、重要なんだろうけどどこか他人ごとになってしまう、という普通の東大生に「皆で考える」場を提供するゼミにしたいと思っています。 それらについて、ただ考えるだけでなく、考えたことを交流させる「場」を本ゼミに実現させて、それを拡大して学園祭にも「場」を作り広げることを一つの具体的な目標とします。 本自由研究ゼミはこれまで、学園祭においてイノシシピザやイノシシソーセージの燻製を来訪者に提供する取り組みを通して、体験ゼミ「伊豆に学ぶ」で扱ったイノシシ被害の問題が南伊豆地域に実際に存在していることを伝えてきました。 講義タイトルにはあえて「獣害問題」と書きました。 なぜ、野生動物と人との軋轢が増しているのでしょうか。 「オオカミを絶滅させてしまったからシカやイノシシが増えている。他所から捕食者オオカミを再導入すればこの問題は解決する」 という話を耳にすることがあります。 オオカミの再導入で問題は簡単に解決するのでしょうか? 問題はそれほど単純ではないと思われます。 オオカミを再導入する前に、なぜ日本人はニホンオオカミを絶滅させてしまったのかということにしっかりと向き合う必要があるはずです。 ニホンオオカミと日本人との間に軋轢があり、その結果としてニホンオオカミを絶滅させることになったのであれば、他所から再導入するオオカミと私たちとの間に軋轢が生じないと考えることに合理性はあるでしょうか。 現代社会は複雑であるがために、私たちを取り巻く様々な関係が希薄になっています。それがために、諸処において自分と対象物・対象事象との繋がりに実感が伴いません。その結果として当事者意識を持てないことになってしまい、それが問題をさらに深刻化させるという、負のスパイラルの見本の様な状態と言えます。「伊豆に学ぶ」「森に学ぶ」ゼミではこれらの気付きを得た学生さんが多数います。 ゼミ中に得たその「感覚」も、そのまま放置すると、あっという間に風化してしまいます。それは実にもったいないことです。 本自由研究ゼミナールは、体験ゼミ「伊豆に学ぶ」とは少し違う角度から本件について考察を深めていきたいと考えています。違う角度とは何か?このゼミナールでは自律的に企画することにより、「伊豆に学ぶ」とは違った視点を得て、自ら発信することを通して深く考える力や行動する力を涵養してもらいたい。 この自由研究ゼミの目標は「獣害問題」の解決に向け政策提案することではありません。政策提案することを目標としてしまうと、あたかもその提案によって解決できるかの如く話をまとめることが目的になり兼ねません。 複雑な問題に対して何とか「解」を捻り出して政策提案することではなく、複雑な問題とじっくりと向き合うこと自体を目的とします。 大学入学試験では、正しい解を素早く出すことが求められるので、多くの東大生はついつい結論を急いでしまいがちではないでしょうか。入試であれば、回答欄に不正解を記そうが、何も書かずにいようが、0点であることに変わりません。偶然か何かのハズミで正解する可能性があるならば、記入しないよりも何らかの解答を記すべきだと教わります。 しかし、今の話題は大学入試ではないので、テキトーな答えを書き入れて、さっさと思考を終わらせることは上策ではありません。答えが出ないことと向き合うことは、東大生がもっとも不得手とすることかもしれません。皆さんが社会に出てから向き合うことは、一筋縄では行かないことが多く、最短距離で正解に直行する思考方法はあまり役に立たないでしょう。そのこと知ることは決して無駄なことではありません。 答えが出せない複雑な問題は、人任せにして、自分はうまく避けて通ればよいのでしょうか。 本ゼミでは、受講生が希望すれば、南伊豆を訪ね獣害の現場を視察するという選択肢を生み出すことができます。本ゼミと合わせてそれらのゼミ作りに関わりませんか。 そこまでできない場合には、本ゼミは「体験」する部分がないので、例えば「森に学ぶ」などに参加して山林の現状を見ることから始めたいと思います。 Sセメスタのゼミでは大菩薩峠を訪ね、増え続けるシカが森林にどんな影響を及ぼすのか、実態をご覧いただきました。大菩薩峠はハイカーに人気ある山域で、多くのハイカーが足を運びます。ハイカーにはシカの影響がどの様に伝わっているのか、日本人の自然観察眼についても実態をご覧いただきたい。 興味がわいたら、51397,60231「森に学ぶ」にてもっと山の実情を見に行くことをお勧めします。 獣害の現場を視察し、罠を作り、仕掛けたいとか、害獣をジビエと捉えて手作りイノシシソーセージを作ってみたいとかのご希望があれば、60228「続伊豆に学ぶ イノシシソーセージ作りは考えるきっかけを与えてくれる」への参加をお勧めします。 さて、本ゼミは自由自主の企画系ゼミですので、 「獣害問題とは何の問題か」という論点を社会に発信してもらいます。 前述した様に、このゼミでは五月祭・駒場祭に「獣害問題とは何の問題か」企画を打ち出します。 問題の本質が何であるのかを一緒に「場」を作り出すのがこの企画の狙いです。 学園祭企画を創作していきましょう。 問題の本質が何であるのかについて、周りを巻き込んで一緒に考えるきっかけを提供する、そういった体験をしてもらうことがこの企画の狙いです。 何を発信するのか どう発信するのか 自由と自主で行動するのが大の苦手という方、少しでも克服したいと、初めの一歩を踏み出そうという方を応援する、そのようなゼミにしたいと思っています。 ※講義の目標:自主・自律に動けるようになること。様々な問題を他人ごとにしない気分を身に付けること。 授業中の取り組み姿勢、企画立案および企画実行の取り組み姿勢、責任ある行動を重視する。 教科書は使用しない。/Will not use textbook 第一回授業日に行う。/Will conduct guidance at first time

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