2023Sシラバス
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物理学で運動方程式をたてるときにかならず「質量」を用います。実は、現代素粒子物理学だと実は質量を持っていることは禁じ手で、自然界のルールを満たしながら質量を持たせるためには工夫が必要で、「自発的対称性の破れ」というアイデアを活用した全く新しい自然観の導入に至っています。そして、この自然観の中心的な役割を果たすのがヒッグス場であり、その存在の証拠がヒッグス粒子なのです。 その自然観の確立の裏には、「強い力」、「弱い力」の発見、その特徴の理解により明らかになってきた不可思議な特徴、謎を体系的に説明をするための多くの物理学者の取り組み、理論のブレークスルー、実験技術革新による実験データによる確たる実証の積み重ねがあります。 教科書である「弱い力、強い力」はこれらを体系的にかつ明確なイメージをもって伝える読み物です。 教科書を各自通読してもらい、内容を補完するための考察を行い、参加学生による発表、議論により現代物理学における真空のイメージの共有や、ヒッグス粒子を発見するための実験コンセプトの理解を目指します。 この目標に向けた、通読(簡単な講義)、疑問点(モヤモヤ)の文字化、理解したことのプレゼンテーションによる共有、少人数での議論、持ち帰り調べ学習により授業が進行する予定です。一見抽象的な素粒子物理学のイメージを掴むという課題を通じ、疑問を明確にする能力、他の人の考えを聞いて消化・考察する能力、自分の考えを発信する能力、議論をする能力を磨き、研究の基礎力の獲得を目指します。 出席と授業参加。 素粒子物理国際研究センター 理学部 初年次ゼミナール理科 31584 木 2 授業の目標・概要 ヒッグス粒子という言葉を聞いたことがありますか? 成績評価方法 授業のキーワード ヒッグス粒子、素粒子実験、自発的対称性の破れ、CERN、加速器実験、素粒子物理学 教科書 ガイダンス 次の教科書を使用する。/Will use the following textbook 書名 著者(訳者) 大栗博司 出版社 ISBN その他 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 31585 木 2 授業の目標・概要 高校における微分や積分の単元では,まず極限の概念を学びます.その際の極限の定義は,「限りなく近づく時」といったやや曖昧なものです.ニュートンやライプニッツが微積分学を創始した際も極限の扱いはそのようなものでしたが,その曖昧さ故に間違った結論を導いてしまうこともありました.19世紀に入るとこれらを克服するためにより厳密に極限や実数の概念を定義する試みがなされ,長い議論の末に最終的に「ε-δ(イプシロン-デルタ)論法」という形で極限の定義がなされました.19世紀中頃に生み出されたε-δ論法は,その後の数学の発展において他の概念に上書きされるものもなく生き残ってきたタフな概念で,今なお微積分学(解析学)の基礎として大学で学びます. このε-δ論法はすでに述べたとおり現代の解析学には必須な概念です.しかし,一方で特に学び立ての初学者に対しては悪名高い概念でもあります.その理由として,定義が込み入っていて一見してわかりにくいからであると思われます.本講義の目標は,グループワークを通してこのε-δ論法を深く学び,理解することです.また,ε-δ論法だけでなく,「デデキントの切断」,および発展的な内容として「p進数」を扱います.デデキントの切断は,ε-δと同じく解析学を厳密に再構築する努力の上で生まれた概念であり,実数の厳密な定義を与えるものです.p進数は整数論的な問題に端を発して考えられた,実数とは異なる別の「数」の概念です. 本講義では,まず全体を小さなグループに分け,上で述べた三つのテーマの一つを深く掘り下げていき,最終的に班で一つの短い「講義」を作ることを行います.このような体験を通じて,テーマへの理解を深めるほか,文献・資料の収集法,グループによる共同学習の手法などについても習得することも目標とします. 初年次ゼミナール理科の評価方法によって評価します。 成績評価方法 授業のキーワード 原理解明・伝達型、数学/解析学、実数、デデキントの切断、イプシロン-デルタ論法、p進数 教科書 ガイダンス 次の教科書を使用する。/Will use the following textbook 書名 著者(訳者) 東京大学教養教育高度化機構初年次教育部門・増田建・坂口菊恵編 出版社 ISBN その他 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 ヒッグス粒子の見つけ方 解析学の基礎 強い力と弱い力 幻冬舎 科学の技法:東京大学「初年次ゼミナール理科」テキスト 東京大学出版会 奥村 恭幸 阿部 紀行

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