2023Sシラバス
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大学では「問い」の「答え」を探求する前にまず「問い」自体を自分で見つける必要があるという点を理解し、学ぶ姿勢の根本的な転換を目指す。授業を通じて「問い」の立て方、「理論」についての考え方、「研究方法」の設定の仕方、学術資料の収集の仕方、議論の根拠の導き方、論述の組み立て方などのアカデミックスキルに触れ、それらを習得する。また、自分が取り組む「問い」が学術的・社会的に意義のある「問い」であることを主張する必要性を理解する。 「問い」の「答え」を導くに当たって必要な、先行研究の理解とオリジナリティの主張の方法(剽窃の防止を含む)、議論と根拠の関係などといったより基礎的な作法および図書館などの研究リソースの利用方法を、第2回の合同授業で学ぶ。 【この授業の目標・概要】 「他者」とは何か、「他者」とは誰か。この問いには答えがない。いつ何時でも文脈次第で、様々な差異や弁別基準を根拠にいかなる線引きも可能だからである。時には、親密であったはずの家族や親友も「他者」となり得るし、己の身体も過去の自分でさえも「他者」となる。 このように考えると、「他者」について考えるということは、「異文化コミュニケーション」などといった際にイメージされるような表面的なスキルの問題では決してないことが分かる。また、ある集団、ないしある属性や特徴を持つグループについて辞書的に調べ説明できることと、その対象を理解したこととは、決してイコールでもない。むしろ前者は「他者」を固定化・隔絶化することである。 それゆえ、「他者」について考えるというテーマ自体、矛盾に満ちている。いったん何らかの差異・属性でもってある対象を恣意的に「他者化」しておきながら、それについて思考・理解(自己化)しようというのだから。しかし、この矛盾を意識しながら、既成概念を崩しては別の線引きをし、それをまた別の文脈に置いては否定する、といったたゆまぬ往還を繰り返しつつもがくことは、決して非生産的な営みではない。 この授業では、(1)身の回りの「他者」をめぐってどのような文献でどのようなことが語られているかを整理することを通じて、また必要に応じて(2)履修者自らが「他者」のいる場に赴き見聞きすることを通じて、各自その「他者」をめぐって考えに考え抜いたプロセスを披露し、履修者全員で討議する。 なお、文献を渉猟しその中で溺れ思考することも、フィールドワークのひとつのあり方であることを踏まえ、履修者には必ずしも実地での調査を強いるものではない。 【学術分野】文化人類学 【授業形態】フィールド型 出席、発表および議論への貢献等の平常点と小論文とで判断する。 初年次ゼミナール文科 31750 火 4 授業の目標・概要 【共通目標】 成績評価方法 授業のキーワード 他者(化)、自己、差異、フィールドワーク 教科書 教科書は使用しない。/Will not use textbook 書名 著者(訳者) 出版社 ISBN その他 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 ガイダンス 「他者」について考える 津田 浩司 文化人類学

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