2023Sシラバス
381/393

1年 文科 理科 2年 文科 理科 時間割コード 全学体験ゼミナール 40210 S2 授業の目標概要 開講 森に学ぶ 森林・林業を意識する (野外実習≒山歩き)に参加可能な学生のみに履修を制限します。 ■全学体験ゼミナールを履修する場合は、必ずUTASでシラバスを参照し、本冊子には掲載されていない詳細な授業内容等を確認したうえで、履修登録を行ってください。 【注意】この授業は開講日程の都合上、成績が所定の確認日より後に公開される見込みが高いので留意すること。 近年、日本では「線状降水帯」による甚大なる気象害が毎年のように発生するなど、「異常」なほどの気象害が常態化しています。しかし、これは地球規模で洪水と渇水が頻発していることの一面を捉えているに過ぎません。気候変動への取り組みやレジリエントな社会づくりの重要性が言われますが、日本社会は十分な取り組みができているでしょうか。 日本の国土は7割近くが森林に覆われています。7割の面積におよぶ森林をどの様に管理するべきか、あなたは考えてみたことはありますか? 山林のことは林業関係者に任せておけば良いでしょうか? 自分はそういう方面に就業しないから考えなくても良いのでしょうか? 人任せ、あるいは誰かの考えに盲従して、国土が取り返しのつかないことになる心配はないと思っているのですか? いま現在、日本において、その肝心の林業はちゃんと回っているのでしょうか。 日本の林業は外国に比べてコスト高であるため、儲けを出しにくいと言われています。儲からない産業には資本が投下されにくい(資本主義から見放される)。すべてを資本主義的な価値観で判断するのであれば、日本の山林は放置するのが最も合理的であるということになりかねません。しかし、それは資本を投下して、その投下に見合った回収を期待できるかどうかという価値観によるものです。現状を放置すると、獣が増えて植生を壊滅させます。植生を失うと、豊かであった土壌が簡単に流亡することになります。土壌の流亡は規模を増したときには、大規模に近辺の植生もろとも下流に押し流してしまうこともあるでしょう。その様な時、下流の人の営みに甚大な影響が出ないと考える方が不自然ででしょう。 【注意】この体験ゼミは森林・林業を意識するために現地に足を運ぶスタイルをとるため、対面受講できる学生のみが受講することができます。オンライン受講はできないのでご注意ください。 【注意】この授業は山岳部やワンダーフォーゲル部の出身者向けではありません(拒むものではありませんが)。誰でも、歩くことが億劫でない限り、参加することができます。山野に興味ある人に、安全に山を楽しんでもらい、同時に山や森林で営まれる林業を意識し考えてもらうために実施する講義です。人並みの体力は必要ですが、山歩きとしては初級向けですので誰でも参加できます。 あなたはハイキングや山野を歩くことが好きでしょうか(好きになりそうでしょうか)。 このゼミは東京近郊の身近な山を、ときどき森林・林業を意識しながら歩く機会を提供することを目的に立ち上げた講義です。 本ゼミは、北海道演習林で林業と向き合うゼミを新型コロナウイルスの影響で実施できなかった折り、東京近郊の低山を歩くゼミとして始めたものです。それが、少しだけ林業を意識しながら低山を歩いてみると、これがなかなかに味わい深いゼミであることを見出すことになりました。今年もS1タームに3山、S2タームに3山、低山歩きのゼミを提供します。 森林・林業を意識する? 山歩きはとても気持ちいいものです。色々なことをくよくよ考えたり、せわしなく過ごしたりしがちな日常生活から距離をとる。山歩きをしているその瞬間は、そう言った日常をすっかり忘れて、ただ歩くことのみに気持ちを向かわせることができます。それもまたよし。 無心に山野を歩くのも好いですが、このゼミでは森林を意識する・林業を意識するという視点を少しだけ持って歩くことを提案します。時々意識を働かせることで見え方がグッと変わってくることを体験してもらいたい。 私たちが生きる現代社会の特徴 私たちが生きる現代社会は、いろいろなプロセスが見えづらい時代であると捉えることができます。構造が複雑になりブラックボックス化が進んでいることもその一因であるでしょう。しかし、それが原因だから仕方がないと片付けてしまえばそれまでです。複雑で忙しい日々を過ごすうちに、思考を節約して簡単に済ませる術を身に着けるという、いわば生活習慣によって観察できない状態・考えられない状態に追い込まれていると捉えることはできないでしょうか。 このゼミでは忙しなく歩くような山歩きはしません。まわりの植物をゆっくりと観察できるくらいの歩調で、時に立ち止りながら山林の中に身を置きます。ゆっくりと歩き、時に立ち止ることで見える量も質も大きく異なってきます。(すみません、たまに少しだけ先を急ぐことがあるかも知れません。) 資本主義経済が支配する社会では 資本主義は資本を投下して、利益を効率よく回収することを目的とします。利益を回収しづらい「林業」は資本主義経済の対象となりにくくなっています。それでは、日本社会に林業は不要でしょうか。林業をしないのであれば、山林も不要でしょうか。不要な山林は外資に売り払って現金化するのが妥当でしょうか。 このゼミではたっぷりとその様なことを考えてもらいたい。 何か正解を見つけに山歩きをするわけではありません。知れば知るほど難しい問題になるのかも知れませんし、一つだけ正解がある問題とは限りません。よく考えてみることそれ自体がこのゼミの目的と言えそうです。 よく考えたあとで、仕上げにもう一度大自然の中に身を置いてみよう。 新型コロナウイルスは未だ収まりませんが、今年度は姉妹ゼミ「森に学ぶ(ふらの)」も実施する計画を立てています。こちらも是非どうぞ。 講義題目 低山歩きS2 【注意】対面授業 担当教員 鴨田 重裕 所属 曜限 単位 農学部 集中 2 対象

元のページ  ../index.html#381

このブックを見る