時間割コード 51470 授業の目標概要 開講 A 伝統工芸を守る意義とは伝統工芸は人が自然と向き合った営みが詰まっている ■全学体験ゼミナールを履修する場合は、必ずUTASでシラバスを参照し、本冊子には掲載されていない詳細な授業内容等を確認したうえで、履修登録を行ってください。 【注意】この授業は、開講日程の都合上成績が前期課程修了要件に反映されない見込みが高いので、履修にあたっては十分に注意すること。 【注意】本ゼミはたたら製鉄・刀剣の里である岡山県を訪ねます。研磨炭焼き体験を基に考察するゼミですので、リモート受講はできません。 伝統工芸の価値とはいったいどの様なものでしょう。美術的な価値でしょうか、あるいは希少性に由来する類の価値でしょうか。 このゼミでは、長い歴史の中で培われてきた土地土地での人の営みを顧みたり、人がどの様に自然に向き合い活用してきたかを今に伝えたりする価値(≒意義)があると考えています。手に入れられるモノが、質・量ともに少なかった中で、使えるものを徹底的に工夫して、最大限に活用する(素材のところを最大限に引き出す)技が蓄積していったのでしょう。技が受け継がれ、その技の対象と成るモノがしっかりと供給されて、初めて伝統工芸が守られることになります。それらがしっかりと守られることによって、現代社会が見落としがちのことに意識を向ける絶好の仕掛けとして機能するのではないかと期待します。 このゼミで着目する駿河炭は、いわゆる伝統工芸品そのものではありません。駿河炭は伝統工芸に欠かせない研磨炭で、明治期に漆器製造が盛んであった静岡県(駿河)でアブラギリの炭が焼かれ研磨炭に用いられたという経緯があります。現在、駿河炭は駿河では焼かれておらず、福井県と岡山県で焼かれています。 駿河炭には、ニホンアブラギリ資源の枯渇という持続可能性の面で問題がありました。アブラギリはかつて桐油(乾性油)を得るために栽培され、明治初期は福井県や島根県が主要な産地でした。今も福井で駿河炭が焼かれているのは、資源量が多かったからと言えそうです。今は、それも底をつきつつあります。 木材の塗装や紙に撥水性を付与する用途のために桐油が使われましたが、石油由来の製品にとって代わられ、今ではアブラギリを栽培することはなくなりました。ということは、現状で何もしなければ、アブラギリ資源は回復を見込めないということになります。東大演習林は、アブラギリ資源を絶やさない施業の仕方に取り組んでいて、それも伝統工芸を守る重要な役割の一つであると考えています。 駿河炭は漆器表面の研磨に欠かせない研磨炭であるが、そのことはあまり知られていない。漆器と言えば、ウルシ(植物)や漆掻きや塗師の重要さは誰でも知っているが、研磨炭は漆器の仕上がりを左右するというのにその重要性が知られていないのはどうしたことであろう。 本ゼミでは日本刀の聖地のひとつ岡山県長船を訪ねます。刀工集団「福岡一文字派」が活躍した備前国福岡の地。現在の長閑な雰囲気と、かつて武器製造拠点であったという史実に大きな隔たりを感じるでしょうか、それとも蓋然性のようなものを感じるのでしょうか。自然と人の繋がり 文化 講義題目 続伊豆に学ぶ 担当教員 鴨田 重裕 所属 曜限 単位 農学部 集中 対象 1年 文科 理科 2 2年 文科 理科 全学体験ゼミナール
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