授業の目標概要 ボカロPで音楽評論家の鮎川ぱてと申します。本講義は、現代日本の音楽状況の中でもっとも重要な存在感を示す「ボ授業の目標概要 近年、失われやすいマイノリティの語りを含んでいる、ミニコミ等の文献資料や口述資料を整理・保存していくことの重要性が評価されており、世界的にコミュニティ・アーカイブの形成や、デジタルアーカイブ化の取り組みが進められている。この全学自由ゼミでは、とりわけ性的マイノリティの語りのアーカイブ化の事例をとりあげ、これまでマイノリティの語りがどのように(デジタル)アーカイブ化されてきたのか、その際どのような方法的・倫理的課題が生じてきたのかを議論する。それを通じて、コミュニティのオンライン化も進んでいる現在、マイノリティの生きられた経験を記録していくことの可能性と困難を理解することを目的とする。 時間割コード 50889 時間割コード 51442 開講 A ボーカロイド音楽論 開講 マイノリティ・デジタルアーカイブをA つくる――アーカイブ化をめぐる実践・方法・倫理の検討 ーカロイド(ボカロ)」を用いた音楽群の分析を通して、音楽自体の本質に迫ろうというものです。 講義では、講師がこれまでも強調してきた「永きにわたった人類による”うたの私有”が終わった」ことのインパクトを考えます。それは同時に、既存の音楽論を振り返り、再検討する機会にもなるでしょう。「アンチ・セクシュアル」というキーワードが、講義のひとつの軸になっていきます。 最初に「ボーカロイド音楽シーンの中で人気を博したのが、ラブソング群ではなかった」という事実に注目します。かつて音楽評論家の湯川れい子さんは「人間は、思春期を迎えるとラブソングを求めるようになる生き物なんです」と語りました。果たしてそうでしょうか。ボカロシーンでは、恋愛などの通念を自明とはしない感性を持った曲ーーアンチ・ラブソングが人気を集めました(ex.「ラブという得体の知れないもの」)。人によっては厨二病的とも言うその感性の内と外を、フランスの人文学者ミシェル・フーコーの議論を参照しながら考えていくところから講義はスタートします。 講義全体の1/3以上を、ジェンダー/セクシュアリティの議論が占めることになります。フェミニズム、LGBTQをはじめとする性の多様性理解、クィア理論など、ジェンダー論の基礎を知ることにも本講義は役立つはずです。 主なアプローチ手法は、記号論、ジェンダー論、精神分析ですが、駒場と言えば、リベラルアーツ。私は、一本学出身者としてこの理念に共感する者です。前記の人文科学的手法に留まらない領域横断的な分析を試みてみたいと思っています。 開講にあたって大学から頂戴した前期課程講師用マニュアルには、皆さんに次の3つを促すようにと謳われています。「新しい概念の理解」「自発的想起」「創造的思考」。これらの現場的実践が、私の言葉で言えば「知的蛮勇」であり、「批評」です。 ボカロは老若男女、すべての人を受け入れるシーンですが、その上で、やはり主役は、若いみなさんだと思っています。みなさんが当事者として立ち会い、そしていまだ深度のある議論が少ないボカロカルチャーこそは、そのような批評の対象とするに最適です。 初音ミクが発表されて16年が経ちました。新しい作家が参入しつづけるこのシーンは衰えることを知らず(本ゼミからもたくさんのボカロPが誕生しました)、昨年から何度目かのボカロ大流行が始まっています。そして、出会いばかりでなく、別れもありました。本学における本講義には、必ず弔わなければいけない作家がいます。 ボカロ、表現、人文科学、ジェンダー。これらのうちどれかひとつにでも高い関心を持っていれば、どの立場の人も主役です。ボーカロイド音楽についての前提知識は必要ありません。科類も問いません。「感覚を思考の俎上に載せること」を恐れないあなたの参加をお待ちしています。 <講師プロフィール> ボカロP/音楽評論家 /東京大学教養学部 非常勤講師 /東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科 非常勤講師 /東京大学先端科学技術センター 身体情報学分野 稲見・門内研究室 連携研究員 講義題目 講義題目 担当教員 学生による全学自由鮎川 ぱて 担当教員 板津 木綿子、武内 今日子 所属 研究ゼミナール 所属 情報学環 曜限 単位 対象 1年 文科 理科 木 5 2 2年 文科 理科 曜限 単位 対象 1年 文科 理科 木 5 2 2年 文科 理科 全学自由研究ゼミナール
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