授業の目標概要 本授業では、「植民地主義と性(ジェンダー・セクシュアリティ)政治」をテーマに、主に東アジアの地域に焦点を当て授業の目標概要 近年、経済や政治や文化といったさまざまな領域で「Diversity & Inclusion」が関心を集めている。日本では2010年代から「ダイバーシティ」への取り組みが注目され、企業では女性や性的マイノリティや外国人といった多様な人材の「活用」が「ダイバーシティ・マネジメント」というかけ声のもとで進められている。行政や自治体でも、いわゆる「同性パートナーシップ条例」の制定や、防災・減災活動におけるマイノリティ視点の導入などの施策が「ダイバーシティ」言説のもとで推進されてきた。東京大学も2022年に「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」を定め*、2023年4月には教養学部にD&I関連授業とセーファースペース(KOSS)を提供する「Diversity & Inclusion部門」が設置された。 「ダイバーシティ/ Diversity & Inclusion」の取り組みは、国連が推進してきたSDGsや、近年のフェミニズムや性的マイノリティの人権課題に対する関心の高まりとも親和性が高いようである。しかし、そもそも「多様性の包摂(Diversity & Inclusion)」とは国家や組織に対して、いかなる変化をもたらす、あるいは変化をともなうプロジェクトなのだろうか。もとより「包摂」は「排除」と対概念で、メンバーシップの境界設定をめぐるポリティクスであって、包摂されるメンバーシップには原理的に臨界点がある。とするならば、どのような政治力学によって特定のメンバーが歓迎すべき構成員として包摂され、あるいは歓迎されないモノとして排除されるのか。「ダイバーシティ/ Diversity & Inclusion」の取り組みは、このような困難や難題といかに向き合ってきたのだろうか。 この授業では、「ダイバーシティ/ Diversity & Inclusion」に関する理論・実証研究を学んだうえで、国連や特定の国家、自治体、大学、企業の関連施策を調査し、批判的に分析してもらう。これらを通して「ダイバーシティ/ Diversity & Inclusion」をめぐる近年の国内外の動向や問題を把握し、その課題を乗り越えるための批判的な視座の獲得を目指す。 *東京大学(2022)「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」 https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400197067.pdf 時間割コード 51428 時間割コード 51429 開講 A 植民地主義と性政治 開講 「ダイバーシティ/ Diversity A & Inclusion」再考 た学術論文や専門書を読み、参加者に対して脱植民地化・脱帝国化といったプロジェクトへの参与を促す。 東アジアでは19世紀から20世紀にかけて華夷秩序から「大東亜共栄圏」へと国際秩序が再編された。日本の帝国化とそれにともなう植民地支配をとおして北海道や沖縄、朝鮮や台湾は近代化のプロセスに巻き込まれ、性の政治が日本の帝国主義・植民地主義のプロジェクトにおいて重要な役割を果たした。グローバル冷戦が終焉を迎えた1990年代以降、植民地支配を受けた諸地域では脱植民地化に関する議論が盛りあがりを見せたが、敗戦後も脱帝国化が果たされなかった日本ではそれらの議論に応答する声をついにもたないまま、歴史修正主義の跋扈を野放しにしている。 この授業は自由演習科目のため、学生の積極的な参加を重視する。授業では少なくない分量の文献を読み、ディスカッションに参加し、エッセイを執筆してもらう。 講義題目 講義題目 担当教員 福永 玄弥 教養教育高度化機構 木 2 担当教員 福永 玄弥 教養教育高度化機構 木 3 所属 所属 曜限 単位 対象 1年 文科 理科 2 2年 文科 理科 曜限 単位 対象 1年 文科 理科 2 2年 文科 理科 全学自由研究ゼミナール
元のページ ../index.html#217