全学自由研究ゼミナール 51407 A1 51413 A1 授業の目標概要 芸術と社会をつなぐ役割を担うアートマネジメントには、多岐にわたる能力が求められます。中でも企画力は、コロナ禍の社会においては、リモート等の新たな形態の可能性を検討しつつ、イベント実施の意義そのものをいっそう明確に提示する必要がある為、今後さらに重要となっていく能力であると考えられます。 そして、企画を考えるプロセスとは、社会と芸術との関係のみならず、それらと自分自身との繋がりをも俯瞰しつつ、興味と関心を掘り下げていく必要のある、まさに「教養」の問われる知的営為とも言えるでしょう。 本授業は、社会の一線で企画づくりに携わって来たプロフェッショナルを講師に迎え、実体験に基づくレクチャーの他、グループワークを通じて企画立案に必要な資質、構成力、発信力を学びます。最終成果発表では、グループ毎に企画を立案し、企画書の作成・ブラッシュアップからプレゼンテーションまでを行います。以上の様な実践を通して「企画を創る」ことを共に考え学び、これからの時代の「教養」としての企画力を身に付けることが、本授業の目標となります。 ●ゲスト講師紹介 鐘ケ江織代 (アートマネージャー、コーディネーター、リサーチャー) パレイドリアン代表。滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール、京都コンサートホールの各事業課を経て、トーキョーワンダーサイト(現トーキョーアーツアンドスペース)では「若手のための現代音楽企画ゼミ」を企画するなど、コンサートやワークショップの企画・制作、若手クリエーターの育成・支援事業等に携わる。 山本和智(作曲家・プロデューサー) 独学で作曲を学ぶ。オーケストラ、室内楽、アンサンブル、合唱、独奏曲、映画音楽など作曲活動は広範にわたり、2006年モリナーリ国際作曲賞第1位(カナダ)、2007年AIC / Mostly Modern 国際作曲コンクール第1位(アイルランド)、2009年度武満徹作曲賞第2位、2010年第5回JFC作曲賞、2011年TOKYO EXPERIMENTAL FESTIVAL- SOUND, ART & PERFORMANCE vol.7奨励賞受賞など。2020年にはサントリーサマーフェスティバルにてオーケストラ作品の新作を初演。2009年より『特殊音樂祭』をプロデュースする。 授業の目標概要 1 1 時間割コード 時間割コード 開講 企画を創る~実践から学ぶ教養としてのアートマネジメン開講 国連とインクルージョン 講義題目 講義題目 ト 担当教員 山上 揚平 教養教育高度化機構 金 2 担当教員 井筒 節 教養教育高度化機構 木 4 所属 所属 曜限 単位 対象 1年 文科 理科 2年 文科 理科 曜限 単位 対象 1年 文科 理科 2年 文科 理科 2015年、国連で193カ国の首脳によって採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」。SDGsは、2016年から2030年までの国際の優先事項を定めたもので、「誰一人取り残さない(Leaving no one behind)」こと、すなわち「インクルージョン」をコア概念としている。 国連では、女性、子供、移民・難民・国内避難民、先住民・少数民族、障害者、高齢者、LGBTI等のインクルージョンが重点課題とされている。偏見や差別により周辺化された人々は、身体的・性的暴力や殺人を含む人権侵害、貧困をはじめとする様々な開発上・心理上の困難に曝されることが多い。また、国際社会においては、障害、LGBTI、精神保健等、テーマ自体が周辺化されることもある。 2022年度A1ターム「国連とインクルージョン」では、「誰一人取り残さない」ことや「インクルージョン」をメインテーマに、「精神保健・心理社会的ウェルビーイング」と「精神障害・知的障害のある人のインクルージョン」を具体例として検討する。また、苦しい立場にある人への「こころのケア」についても学ぶ。 SDGsでは、「精神保健・心理社会的ウェルビーイング」が初めて国際の優先事項として含まれた他、5つの目標が障害に言及しており、今後の開発・人権を考える上で重要な分野である。中でも、感情や心のウェルビーイング、精神障害・知的障害は目に見えにくく、スティグマや偏見も強いため、周辺化されやすい。開発途上国では、精神・知的障害者に対する殺人や暴力等が多く見られる他、閉鎖施設等で鎖に繋がれる等、重篤な人権侵害が後をたたない。一方で、4人に1人が精神疾患を経験し、OECDによると精神疾患による経済的コストはGDPの4%以上である。また、世界銀行とWHOは、精神保健に対する1ドルの投資は、3ドルの利益を生むとしている。また、心理的応急処置(PFA)等、一人ひとりがこころのケアのためにできる手法も確立されてきている。 国連では、2006年に障害者権利条約が採択され、批准国においては精神・知的障害も含む障害者のインクルージョンが法的義務となった他、SDGsや仙台防災枠組でも優先事項に含まれた。しかし、これらの実施をめぐっては、差別的態度を含む社会的障壁、身体拘束や強制入院、重度の障害や認知症を持っている人々の意思決定や社会参加、精神障害者や知的障害者のアクセシビリティーの確保方法、予算・人材確保等をめぐり、難しい課題が多い。 本講義では、国連機関職員や当事者を含む講師から世界と現場の状況を学びつつ、心のウェルビーイングと多様性をめぐる国際社会の新しい解決策を考える。また、これを通して、国連の実際およびインクルージョンについて学ぶことを目的とする。
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