全学自由研究ゼミナール 51379 授業の目標概要 本自由研究ゼミナールは、体験ゼミナール「伊豆に学ぶ」のコンセプトをさらに深く追求することを目的としている。 今学期より「伊豆に学ぶ」シリーズを再編成して、これまで別立てで実施してきた「竹林管理・炭焼き編」と「熱帯植物編」を統合することにした。かつての「熱帯植物編」ではチョコレートやプリンといった日本人に馴染み深い食品とその原料を教材として捉えた。無意識に食べてきたチョコレートを教材に据えることにより初めて見えるコトがある。無意識≒考えない(当たり前すぎて、考える必要もないことととらえてしまう)。 本自由研究ゼミナールでは無意識に過ごしてきたコトに意識を向けることを起点とする。 全学体験ゼミ「伊豆に学ぶ」で初めてチョコレートをしっかりと意識したという方には、もう少しじっくりと向き合っていただきたい。もちろん、「伊豆に学ぶ」の受講生ばかりではなく、チョコレートについて考えてみたい、考える必要を感じる、重要なんだろうけどどこか他人ごとになってしまうという、普通の東大生に「皆で考える」場を提供する企画に取り組んで、ただ考えるだけでなく、考えたことを交流させる「場」を学園祭に作ることを一つの具体的な目標とします。そこの辺りが本ゼミが企画系ゼミである所以です。 本自由研究ゼミはこれまで、学園祭においてビーントゥーバーチョコレート作り体験を来訪者に提供する取り組みを通して、体験ゼミ「伊豆に学ぶ」で垣間見たチョコレートに関する情報を来訪者に伝え、議論する雰囲気を共有してきました。 しかし、新型コロナ禍にあって、従前のスタイルで学園祭にて演示することができなくなりました。2022年Aセメスタも「新型コロナ時代版」として、チョコレートと向き合う機会を提供します。 本自由研究ゼミナールでは意識を向ける一つの方向性として「チョコレートはお好き?外来種は?」という講義タイトルを提示しました。 チョコレートは好きだけど、外来種を好き好む人などいるだろうか?と訝しく思ったであろうか。 チョコレートのようによく知っているつもりのものであっても、実は知らないことが多いということは、世の中に実に多く存在していることに気づくであろう。私たちにとって在り来たりの存在となってしまったチョコレートも、農作物の加工品である。原料のカカオの原産地は中南米であるが、現在の主要生産国はアフリカのコートジボワールやガーナ、そしてアジアのインドネシアであることも知識としては多くの東大生がインプット済みのことと思う。しかし、ちょっと考えてみれば当たり前であるはずの、アフリカやアジアのカカオ生産国においてカカオが外来種であることに意識が向かうことはないのではないだろうか。 重要な農作物という点でカカオに引けを取らないパラゴムは言わずと知られた天然ゴムの原料である。天然ゴムは世界の物流を支えていると言っても過言ではなく、その点においてカカオに勝るとも劣らない超重要農作物である。そのようなことは東大生の多くが詳しいはずである。原産地ブラジルの天然ゴム生産の国際的なシェアが小さいことも、東大生は知識としては知っている。つまり、天然ゴムの主要生産国において、パラゴムもまた外来種であることを知識としては持っている。しかし、知識として持っているはずのことを、その様には意識できていないのである。 その一方で日本の外来種問題に接する時には「外来種はよくない」というステレオタイプを持っていないだろうか。これをもう一つの問題点として取り上げてみたい。ステレオタイプは即座の判断をする際には便利な道具になるが、実は思考を停止させる一面があることを是非とも意識していただきたい。 「伊豆に学ぶ」シリーズでは、現代人を取り巻く様々な関係が希薄であること、それがために諸処に自分と様々な対象物や対象事象との繋がりに実感が伴わないこと、皆が当事者意識を持てないことが問題をさらに深刻化させているというとても重要な気付きを得られたと思います。ゼミ中に得たその「感覚」も、そのまま放置すると、あっという間に風化してしまいます。それは実にもったいないことです。 本自由研究ゼミナールは、体験ゼミ「伊豆に学ぶ」とは少し違う角度から本件について考察を深めていきたいと考えています。違う角度とは何か?このゼミナールでは自律的に企画することにより、「伊豆に学ぶ」とは違った視点得て、発信することを通して深く考える力や行動する力を涵養してもらいたい。 この自由研究ゼミの目標は「チョコレート問題」「外来種問題」の解決策を提案することではありません。複雑な問題に対して簡単に「解」を出そうとするのではなく、複雑な問題とじっくりと向き合うことを目標とします。答えが出ないことと向き合うことは、東大生がもっとも不得手とすることかもしれません。大学入学試験では、正しい解を素早く出すことが求められるので、多くの東大生はその手のことは得意でしょう。 皆さんが社会に出てから向き合うことは、一筋縄では行かないことが多く、最短距離で正解に直行する思考方法はあまり役に立たないかも知れません。 答えが出せない複雑な問題は、うまく避けて通ればよいのでしょうか。 自分は関わらずに、他の誰かに任せればよいのでしょうか。 前述した様に、 このゼミでは五月祭・駒場祭に「チョコレート問題を提起し、向き合う」企画を打ち出します。正解のない、複雑な問題としっかりと向き合うことの必要性を感じていただきたい。 問題の本質が何であるのかを一緒に考えるきっかけを提供するのがこの企画の狙いです。 ※受講人数:10人を上限とする ※講義の目標:自主・自律に動けるようになること。様々な問題を他人ごとにしない気分を身に付けること。学園祭企画を立ち上げること。 ※講義:駒場で対面4回のほか、希望があれば南伊豆で獣害の現場視察や罠作りなどの体験をおこなう。 ※学園祭に自分たちの企画を出展することを目標とする ※ガイダンスは10/4に対面で行います。 ・参加希望者はizu.seminar(アットマーク@)gmail.comまで、氏名・学籍番号を知らせてください。 ・件名を「自由自主のチョコゼミ」としてください。 2 時間割コード 開講 チョコレートはお好き?外来種は? (自由自主の企画系ゼミ)~「チョコレートが好き」から広A 講義題目 がる世界~ 担当教員 鴨田 重裕 所属 農学部 曜限 単位 対象 1年 文科 理科 2年 文科 理科 集中
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