2021Sシラバス
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総合科目 E(物質・生命) 時間割コード 30813 S 31110 S 講義題目 物理学による生命の記述(アドバンスト理科) 授業の目標概要 「生命の神秘」を見たとき、それを物理学で説明できたならば、その「神秘さ」は失われてしまうでしょうか。あるいは、「物質の神秘さ」をもたらすでしょうか。皆さんの答えがそのどちらであったとしても、生命現象の根底には数多くの物理法則が存在しています。例えば、細胞運動ではタンパク質溶液の液体-固体相転移(ゾル―ゲル相転移)やタンパク質の反応拡散波が鍵となります。また近年、細胞内ではタンパク質や核酸が会合し、膜を持たないオルガネラとして機能することが分かってきました。相分離と呼ばれるこの現象の原理は、ドレッシングにみられる水と油の分離と同じものです。しかし、理論的に記述できる試験菅中での相分離や相転移と細胞内での振る舞いには違いがあり、説明できない点も多く存在します。こうした溝を埋めるべく、生物学と物理学が協力して研究を展開してきています。本講義では、物理学で説明できる(はずの)物質と生物の境界を明確化することで、現在の物理学で説明できる「物質の神秘さ」や説明できない「生命の神秘さ」を味わうことを目指します。そのため、物理学は得意ではないけれど好きな生物学を極めたい、あるいは、生物学は得意ではないけれど物理学を極めたい、という方を歓迎します。 本講義の前半では、ソフトという力学的性質の定義から、従来の気体・液体・個体とは異なるソフトマター全般の力学的性質について理解します。その後、生物細胞を題材に力学や熱力学、統計力学の知識を総動員しながら、生命を特徴付ける「生物の形、物質の移送、運動」といった現象について物理的に表現します。さらに、状況が許せば、物質である人工細胞と生細胞を実際に観察したり、マイクロキャピラリーと呼ばれる非常に細いガラス管やレーザーピンセットを直接操作する、生物らしさの体験も行います。 授業では、講義に加えてデモ実験も行うため、人数を20人程度に制限します。そのため、受講希望者が20名を超える場合には、ガイダンス時に基礎学力の確認と、生物学と物理学の複合領域への学習意欲に関する調査による選抜を行います。提示した課題は、以下に書いた通りITC-LMSに掲示されていますが、見られなかった人は柳澤へメール(myanagisawa[at]g.ecc.u-tokyo.ac.jp)にて問い合わせてください。また選抜試験を行った場合、優3割ルールの適用外となり、成績は3割を超えて有を与える場合があります。 生命進化概論(アドバンスト理科) 講義題目 授業の目標概要 「生物学は進化という観点がないと何も理解できない」というのは進化生物学者のドブジャンスキーの言葉である。生物とは自然界で唯一進化する能力をもつ存在である。生物はおよそ40億年前に化合物の集まりとして誕生し、その後数億年を経て原核生物、真核生物、さらに多細胞生物へと進化し、ヒトが誕生した。いまや自然界はスケールの異なる無数の生物で埋め尽くされている。なぜ生物は進化するのだろうか? いかなる仕組みでこんなにも多種多様に進化し得たのだろうか? どこから来て、そしてどこへ行くのだろうか? そこにはどんな法則や傾向があるのだろうか? これらの答えを得るために、今現在も数多くの科学者が研究を続けている。本講義では、これまでに行われてきた生命進化の研究を紹介し、実際に進化の計算機シミュレーションを通じてその研究の一端を体験してもらう。これにより進化という現象を計算機の中に再現できるようになり、生命進化の何が当然で、何が奇跡だったのかを理解できるようになる。 本講義では講義とあわせて受講者にpythonを使って進化シミュレーションを行ってもらう。シミュレーションにはプログラミング技術が必要であるが、意欲さえあればこれまでの経験は問わない。必要な知識は授業中に身につけることができる。進化という現象は生物学を学ぶだけではなく、最適化のアルゴリズムとしても、そして私たち人間の特性を知るためににも重要な知識である。生物の知識の有無や理系文系を問わず意欲のある受講者を歓迎する。 なお、受講者数を20名程度に制限するので、ガイダンス時に生命科学の基礎学力の確認と学習意欲に関する調査を行う。その結果、1週間以内に、第二回以降の受講対象者の学生証番号を発表する。 時間割コード 開講 授業科目名 先進科学Ⅱα 開講 授業科目名 先進科学Ⅲα 担当教員 市橋 伯一 担当教員 柳澤 実穂 所属 先進科学 所属 先進科学 水 5 金 2 曜限 曜限 対象 1年 文科 理科 2年 文科 理科 対象 1年 文科 理科 2年 文科 理科

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