2020Aシラバス
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1年 文科 理科 2年 文科 理科 木 4 1年 文科 理科 2年 文科 理科 木 5 A 時間割コード 時間割コード 全学自由研究ゼミナール 51436 A1 国連とインクルージョン 授業の目標概要 (今の所、オンラインで開講予定です) 51139 授業の目標概要 開講 講義題目 開講 講義題目 ボーカロイド音楽論 国連で、193カ国の首脳によって採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」(2015)。SDGsは、2016年から2030年までの国際の優先事項を定めたもので、「誰一人取り残さない(Leaving no one behind)」こと、すなわち「インクルージョン」をコア概念としている。国連では、女性、子供、移民・難民・国内避難民、先住民・少数民族、障害者、高齢者、LGBTI等のインクルージョンが重点課題とされている。偏見や差別により周辺化された人々は、身体的・性的暴力や殺人を含む人権侵害、貧困をはじめとする様々な開発上の困難に曝されることが多い。また、国際社会においては、障害、LGBTI、精神保健等、テーマ自体が周辺化されることもある。 2020年度A1タームでは、世界人口の15%を占める「障害者のインクルージョン」をテーマとする。SDGsでは7つのターゲットが障害に関する指標を含んでおり、今後の開発・人権を考える上では、障害者のインクルージョンやアクセシビリティーの視点は欠かせない。中でも、精神障害・知的障害は目に見えにくく、スティグマや偏見も強いため、周辺化されやすい。開発途上国では、精神・知的障害者に対する殺人や暴力等が多く見られる他、閉鎖施設等で鎖に繋がれる等、重篤な人権侵害が後をたたない。一方で、4人に1人が精神疾患を経験し、OECDによると精神疾患による経済的コストはGDPの4%以上である。また、世界銀行とWHOは、精神保健に対する1ドルの投資は、3ドルの利益を生むとしている。 国連では、2006年に障害者権利条約が採択され、批准国においては精神・知的障害も含む障害者のインクルージョンが法的義務となった他、SDGsや仙台防災枠組でも優先事項に含まれた。しかし、これらの実施をめぐっては、差別的態度を含む社会的障壁、身体拘束や強制入院、重度の障害や認知症を持っている人々の意思決定や社会参加、精神障害者や知的障害者のアクセシビリティーの確保方法等をめぐり、難しい課題が多い。 本講義では、国連機関職員や当事者を含む講師から現場の状況を学びつつ、学生間の討議や調査を行い、障害者の権利をめぐる国際社会の新しい解決策を考える。また、これを通して、国連の実際およびインクルージョンについて学ぶことを目的とする。 ボカロPで音楽評論家の鮎川ぱてと申します。本講義は、現代日本の音楽状況の中でもっとも重要な存在感を示す「ボーカロイド(ボカロ)」を用いた音楽群の分析を通して、近年のボカロ流行現象の本質、ひいては音楽自体の本質に迫ろうというものです。 講義では、講師がこれまでも強調してきた「永きにわたった人類による”うたの私有”が終わった」ことのインパクトを考えます。それは同時に、既存の音楽論を振り返り、再検討する機会にもなるでしょう。「アンチ・セクシュアル」というキーワードが、講義のひとつの軸になっていきます。 最初に「シーンの中で人気を博したのが、ラブソング群ではなかった」という事実に注目します。かつて音楽評論家の湯川れい子さんは「人間は、思春期を迎えるとラブソングを求めるようになる生き物なんです」と語りました。果たしてそうでしょうか。ボカロシーンでは、アンチ・ラブソング、とまでは言わないまでも、恋愛などの通念を自明とはしない感性を持った曲が人気を集めました(ex.「ラブという得体の知れないもの」)。人によっては厨二病的とも言うその感性の内と外を、フランスの人文学者ミシェル・フーコーの議論を参照しながら考えていくところから講義はスタートします。 主なアプローチ手法は、記号論、ジェンダー論、精神分析ですが、駒場と言えば、リベラルアーツ。私は、一本学出身者としてこの理念に共感する者です。狭義のアカデミシャンではないゆえに可能なある種の知的蛮勇として、前記の人文科学的手法に留まらない領域横断的な分析を試みてみたいと思っています。 開講にあたって大学から頂戴した前期課程講師用マニュアルには、皆さんに次の3つを促すようにと謳われています。「新しい概念の理解」「自発的想起」「創造的思考」。これらの現場的実践が、私の言葉で言えば「知的蛮勇」であり、「批評」です。 ボカロは老若男女、すべての人を受け入れるシーンですが、その上で、やはり主役は、若いみなさんだと思っています。みなさんが当事者として立ち会い、そしていまだ深度のある議論が少ないボカロカルチャーこそは、そのような批評の対象とするに最適です。 初音ミクが発表されて13年が経ちました。新しい作家が参入しつづけるこのシーンは衰えることを知りません(本ゼミからもたくさんのボカロPが誕生しました)。出会いばかりでなく、別れもありました。本学における本講義には、必ず弔わなければいけない作家がいます。 ボカロが好きな人。音楽が好きな人。かつてボカロが好きだった人。どの立場の人も主役です。科類は問いません。「感覚を思考の俎上にあげること」を恐れないあなたの参加をお待ちしています。 <補記> 講師は2017年より東京大学先端科学技術研究センター人間支援工学分野中邑研究室に協力研究員として所属しています。同研究室は、学校教育がフィットしない非典型的な子どもたちにオルタナティブな教育を提供するプロジェクト「ROCKET」を運営しています。本講義は独立したものですが、「典型的ではないこと」をめぐる思考において同プロジェクトと共鳴しています。このような活動に関心のある学生にも集まってもらえたらと思っています。 担当教員 井筒 節 担当教員 鮎川 ぱて 所属 教養教育 高度化機構 所属 学生の希望によって開設される全学自由研究ゼミナール 曜限 単位 曜限 単位 1 2 対象 対象

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