2020Sシラバス
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初年次ゼミナール理科 31468 31500 授業の目標・概要 「数」というものがなかったらどうなっていただろう。 まずお金というものが成り立たなくてコンビニで三角サンドが買えないことになる。 時間が数で表せないので授業時間をきめて学生や教員が教室に集まるのも無理だろうし、体温を計るのにも困るので医者も大変である。 まあ要するに人間は物事を「数」に結び付けて理解しているのであり、そういうわけで算数も含めると数学が学校教育の多くの部分を占めており、また他の多くの学問の基礎となっているわけである。 特に「長さ」と「数」を結びつけると、棒切れに等間隔に目盛を打つことになって、「物差し」ができる。 こういったことから「数」と「直線上の点」を対応させるという発想が自然に生まれる。「直線上の点」に対応する数が「実数」である。 物理学や統計学や工学を始めとして多くの分野で使われる解析学(高校の微分・積分を発展させた数学の分野)は実数を舞台としているし収束概念は解析学の柱石ともいえる基本要素である。 高校までの微分積分や点列の収束の扱いと異り、学問としての数学において、解析学は厳密に議論が展開される。 そのなかでも基本となるのは「デデキントの切断による実数の定義」と「イプシロン・デルタ論法による点列の収束の定義」である。 体験上ここで多くの学生はとまどったり、ややもすると拒否反応をおこしたりする場合もある。 「学問としての数学」などと権威主義っぽい書き方をしたが、当然「実数」とか「収束」とかいうことについてはいろいろな人がいろいろなことを考え(厳密性にこだわることへの批判もあった)、 それを公表して長きにわたって戦いが行われてきたのである。(「デデキントの切断」は150年ぐらい、「イプシロン・デルタ論法」は200年ぐらいの歴史がある。) これらの古典的な数学はあるいは現在の数学のありかた(他の学問もおなじだろうが)は、こういったタフな戦いの勝ち残りなのであり、こうして大学で教えられていることにはそれなりの理由がある。 この授業においては、全体を小グループにわけ、担当教員による講義、グループディスカッションなどを授業計画によって進め、最終的に「デデキントの切断による実数の定義」あるいは「イプシロン・デルタ論法による点列の収束の定義」のいずれかのテーマについて、この授業に参加していないような学生にもよくわかるような「理想的な講義」を自分達の手で作りあげるのが目標である。 このような体験を通じ、題材としてとりあげたテーマについて理解を深めるのみならず、文献・資料の収集法、グループによる共同学習の手法などについても習得する。また数学の意義についての自分なりの観点の確立に資するようにもしたい。 また本年度より新たなテーマとして上記の2つに加え「pー進体」も取り上げる。これは高校までの数学には出てこなかった物だが、数論においては基本的な物であり、暗号理論などへの応用の基礎にもなっている。 初年次ゼミナール理科の評価方法によって評価します。 成績評価方法 授業のキーワード 原理解明・伝達型、数学/解析学、実数、デデキントの切断、イプシロン・デルタ論法、pー進体 教科書 次の教科書を使用する。/Will use the following textbook 書名 著者(訳者) 東京大学教養教育高度化機構初年次教育部門・増田建・坂口菊恵編 出版社 ガイダンス 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 授業の目標・概要 <授業の概要> 成績評価方法 授業のキーワード 問題発見・解決型、材料科学、ナノテクノロジー、バイオマテリアル 教科書 ガイダンス これまで材料科学分野で未解決の課題や将来こんな材料があればといった課題設定に対して調査し議論することで教科書に載っていない問題や社会的意義についてまとめプレゼンテーションを行う。教員から設定された以下の3つのサブテーマに対し、その背景から問題の抽出や発展させるための研究方法などグループに分かれ調査・討議し、最終プレゼンテーションをグループごとに行う。 <サブテーマ> サブテーマ1「デバイスの未来を劇的に変える身近な材料」 ・半導体の集積化技術はシリコンに対して予想される原理的限界に到達しつつあります。半導体デバイスが今後進化し続けるためには、新しい優れた材料の開発が急務です。その鍵を握っているのが、皆に身近な「鉛筆」の中にあるカーボン系材料です。カーボン系の歴史的背景の調査や、鉛筆の電気伝導の測定・解析等を通して、それが応用されていくであろうナノテクノロジーの将来を考えたい。 サブテーマ2「生物に学ぶ機能性高分子材料」 ・人類は古くから自然や生物にヒントを得て材料を開発してきました。近年の分子生物学やナノテクノロジーの進展は生物の分子レベル・ナノレベルでの理解を大きく深めたため、生物模倣技術も新展開を迎えています。本サブテーマでは生物に学ぶ機能性高分子材料の開発例を調査した後、どのような未来材料が考えられるかを議論します。 サブテーマ3「ものづくりから考える健康診断」 ・糖尿病患者が合併症を引き起こさないためには日頃の血糖値を自己管理する必要があります。また、アレルギーの発症は乳幼児で最も高く、その検査には多くの血液を採取する必要があります。このような自身の健康状態を診断するために様々なテクノロジーを駆使したバイオセンサが使われ、金属、半導体、高分子といった特徴ある機能を持った材料が使われています。本サブテーマでは、ものづくりの視点に立って健康診断の現状と課題について議論したい。 初年次ゼミナール理科の評価方法によって評価します。 プリントを配布する。/Will distribute handouts 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 (問題発見・解決型) 解析学の基礎 科学の技法:アクティブラーニングで学ぶ初年次ゼミナール理科 東京大学出版会 K201 K302 火 1 火 1 材料科学の課題と先端的応用 坂田 利弥 松本 久義 工学部 理学部

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