2019Aシラバス
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1年 文二 文三 2年 文二 文三 水 1 A 基礎科目 社会科学 50488 講義題目 授業の目標概要 評価方法 教科書 ガイダンス 政治の基礎概念と国民的和解 1 「政治とは何か」「何のために政治学を勉強するのか」という根本的な問いから始まって、主権(sovreignty)、憲法(constitution)、政治体制(political regime)、国家(state)、社会(society)、民主主義(democracy)、国民(nation)、市民(citizen)、政党(political party)、選挙(election)など、政治を理解するために必要な基本的な諸概念に関する理解を深め、今後、日本国内の政治に関する種々の現象、周辺地域のアジア諸国の民主化プロセス、その後の国内政治と国際政治との共振現象としての「歴史問題」を冷静に分析するのに必要な基礎を身につける。 2 民主主義(democracy)とは何であり、その主体としての国民や、その客体としての国家的統治とは何かという問題を、対外政策を含めた公共性の実現プロセスとして考える能力を養う。民主主義に関する既存の見方も時代によって変遷しているので、夜警国家時代、福祉国家時代、小さな政府を基礎とするグローバル化の時代に大別しながら考察を深める。 3 各時代によって異なる政治と経済との関係について、歴史的な展開過程やいくつかの争点を選んで考察を深める。同様に、各時代によって異なるところの、国民的社会を自己再生してきた基盤としての文化と政治との関係にも視野を広げて、現代の日本と周辺諸国との民主主義体制の共存のあり方という観点から、「国民的和解」を焦点にして歴史問題にアプローチする視点を各自に築いてもらう。 4 アジアの周辺地域が民主化によっていかに政治体制を変化させたのかという問題は、通常、比較政治という分野に属するが、この民主化の問題を日本自身のそれとの比較を念頭に、思考の対象とできるようにする。日本では1955年以来、自民党中心の一党優位体制が続いてきたが、1993-96年、および、2009-2012年には、それまでの野党が政権を掌握した。(2009年総選挙では、野党民主党が308議席を獲得、自民党が119議席と大敗し小選挙区制の効果が発揮された)しかしこうした日本政治における政権交代が、新しい歴史観を伴うものでなかったのに対して、日本周辺地域としての韓国と台湾における民主化は、新たな歴史認識を掲げた勢力による平和的体制変革として進められた。韓国における民衆史、台湾における台湾史は民主化運動に対する幅広い支持を集める手段となり、民主化以前の政治体制の象徴となった存在こそ「歴史の被害者」であった。歴史解釈権を伴ってこそ、アジアの民主化は成功したといえる。また、被害者の人権や女性の尊厳という普遍的価値の実現は、体制の変革・民主化と円満に自然調和して、少なくともある時点まで進んだといえる。また、こうした観点から日本を見れば、冷戦下の国内的冷戦状況の下で「革新」の側が掲げてきた異なる歴史認識こそ、「未完の民主化」とその契機としての明治の自由民権運動、大正デモクラシー、そして占領下の民主化をつなぐ歴史観であったということができる。 以上、日本の大学で政治学の講義をする際には、日本の政治をメインの対象とせざるを得ないが、留学生を含めて日本国籍を持たない受講生がいることや、近年の出口が見えない歴史問題の展開をも念頭に、政治と経済、そして政治と文化の関係にも目配せをしながら、大きな公共性の抽出過程としての政治、国内政治と国際政治のレベルを超えた共振現象、そして国民的和解に向けた新たな学の試みにも注意を向けてほしい。 教科書は特には指定しないが、授業の内容に関して以下の参考書が授業を理解するために一定程度有用だと考える。各会の授業に関して、下記のABCDの参考書の関連部分を示すので、授業を理解するための参考にしてもらいたい。 A 久米郁男・川出良枝・古城佳子・田中愛治・真渕勝 編著『New Liberal Arts Selection 政治学 Political Science: Scope and Theory』有斐閣、2003年) B 川崎修・杉田敦 編『現代政治理論』有斐閣、2005年 C 苅部直・宇野重規・中本義彦編『政治学をつかむ』有斐閣、2011年 D 川出良枝・谷口将紀編『政治学』東京大学出版会、2012年 E マーク・ピーティー、浅野豊美訳『植民地―20世紀日本帝国50年の興亡』慈学社、2012年。 また、特に、民主主義(democracy)に関しては、以下が手がかりとして有益である。 杉田敦『デモクラシーの論じ方:論争の政治』ちくま新書、2001年 杉田敦『政治的思考』岩波新書、2013年 森政稔『変貌する民主主義』ちくま新書、2008年;森政稔『迷走する民主主義』ちくま新書、2016年。 宇野重規『<私>時代のデモクラシー』岩波新書、2010年 佐々木毅『民主主義という不思議な仕組み』筑摩書房、2007年 中北浩爾『現代日本の政党デモクラシー』岩波新書、2012年 丸山眞男著、杉田敦編『丸山眞男セレクション』 平凡社ライブラリー(文庫)、2010年 杉田敦『境界線の政治学 増補版』岩波現代文庫、2015年。 このうち、2019年度秋の授業では、 杉田敦『境界線の政治学 増補版』(岩波現代文庫、2015年)に関するレポートを提出してもらう。 定期試験 教科書は使用しない。/Will not use textbook 第一回授業日に行う。/Will conduct guidance at first time 525 時間割コード 開講 授業科目名 政治Ⅱ 担当教員 浅野 豊美 所属 法・政治 曜限 教室 対象

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