2019Aシラバス
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1年 文科 理科 2年 文科 理科 福島第一原子力発電所の事故から歳月が経ちました。現地では、復興と帰還、そして廃炉に向けた取り組みが進んでいますが、事故にともなって広範な地域に放出された大量の放射性物質による環境汚染は、未だに社会的影響を与えています。かつてはメディアを賑わせた放射線をめぐるリスクの議論も、必ずしも人々の科学的リテラシーを向上させたとは言えない状況の中、人々の意識が風化しつつあります。 放射線の問題を理解するには、物理・化学・生物・医学・工学・農学・法律・社会学など様々な分野の知識が必要で、全てを網羅することは容易ではありません。放射線の基礎的知識に関する教育は十分とは言い難く、大学においても、広く一般の学生が系統立って学べる機会は限られています。 その貴重な機会を提供すべく、教養学部の教員が科学者・教育者の使命と意気込んで始めた講義が、今期で9年目の実績をもつ主題科目「放射線を科学的に理解する」です。担当教員に加えて、様々な分野の専門家をゲスト講師に招き、放射性核種や放射線の物理学的性質から生物学的・医学的影響やリスクの考え方、さらには環境汚染問題や社会的影響まで、幅広く講義を展開します。学際的な教養学部の強みを生かした講義で、科学的知識を体系的に身につけ、定性的および定量的に正しく判断する能力を養うことを目的とします。 理科生を主な対象としますが、意欲のある文科生も歓迎します。教員一同、熱意あふれる分かりやすい講義を心がけており、履修生からは、理解が深まり役に立つ授業だったと、毎年高い評価を受けています。多くの参加を期待しています。 ★ 前半ガイダンス、後半【鳥居:理学部】放射線入門(放射線とは、身の周りの放射線) ★ 【鳥居】放射線物理学(放射性崩壊と放射能、放射線と物質の相互作用) ★ 【鳥居】放射線物理学・放射線化学(物質中でのエネルギー損失過程、放射線の単位) ★ 【小豆川:教養化学】放射線計測学(放射線の測定原理・方法・問題点) ★ 【渡邊:教養生命科学】放射線生物学(放射線の細胞および生体への影響) ★ 【鳥居】原子核物理学(原子核模型と核構造、核崩壊と核分裂) ★ 【鳥居】原子力工学と原子力事故(原子力発電の原理、原子力事故、放射性廃棄物処理問題) ★ 【小豆川】環境放射化学(放射線量の時間変化、放射性物質の濃縮と拡散、シミュレーション) ★ 【関谷直也:情報学環】原子力災害の社会的影響(風評被害・放射線リスクコミュニケーション) ★ 【藤原徹:農学部応用生命化学】放射性物質汚染と農業(植物によるセシウムの吸収と輸送) ★ 【太田岳史:医学部附属病院放射線科】放射線医療(放射線治療・診断技術と医療被ばく) ★ 【渡邊】放射線の利用(生命科学研究、育種、滅菌、工学応用など) ★ 【鳥居】加速器科学(人工の放射線)・放射線防護学(線量評価)・まとめ なお、以下の教科書はこの講義を元に執筆したものです。なくても分かるように講義しますが、授業の深い理解に役立つので是非お薦めします。 出席とレポートによる合否判定 次の教科書を使用する。/Will use the following textbook 書名 著者(訳者) 鳥居 寛之・小豆川勝見・渡辺雄一郎 著(中川恵一 執筆協力) 出版社 ISBN 第一回授業日に行う。/Will conduct guidance at first time A 放射線を科学的に理解する 鳥居 寛之 教養教育高度化機構 金 5 学術フロンティア講義 51308 授業の目標概要 評価方法 教科書 ガイダンス 放射線を科学的に理解する ~基礎からわかる東大教養の講義~(初版第5刷以降を推奨) 丸善出版 978-4-621-08597-4(2014年発行の第5刷以降の購入を推奨します。) 2 K303 時間割コード 開講 講義題目 担当教員 所属 曜限 単位 教室 対象

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