2019Sシラバス
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木3 本誌「初年次ゼミナール文科の履修について」の頁を参照のこと。 【この授業の目標・概要】 文化人類学はフィールドワークという作業を最も重視してきた学問の一つとして知られる。調査対象の現場に自ら参加しながら長い時間を過ごし、その中で、その現場独特の、物事の生きられた連関——それは大抵、最初に予想していたのとは全く異なっている——がしだいに理解できるようになる。人類学者がこうしたフィールドワークの成果を一つの著作としてまとめたものが「民族誌」である。文化人類学はともかくとして、民族誌を読むことは、物事を地に着いた形で考える習慣をつけるトレーニングになるだろう。 この授業では、各自の興味関心に従って、この民族誌と呼ばれるジャンルの著作の面白さや奥深さを発見し、自分なりの仕方でそれを掘り下げてもらいたいと思う。文化人類学者による民族誌は、かつてのいわゆる「未開社会」の研究にとどまらず、今日では様々な現代的テーマをカバーしているので、取り上げうる素材には大きな広がりがある。大事なことは、民族誌を読む中で、物事を地に着いた形で考える能力を養うこと、言い換えれば、一般的言明の向こうにある具体的現実をしっかり想像する力を養うことである。研究テーマによるが、可能であれば、「フィールド」を経験してみてその感覚をより確かなものにするのもよい。 授業の方向性としては、授業参加者が「研究」をなるべく実質的に、分厚く学ぶことを重視したい。あらゆる研究に言えることだが、「問い」と「答え」の間には様々な迷いがあり、行き来があり、揺れがある。一見無駄にみえる、そうした動きの中にこそ研究という営みの最も深い部分がある(このことは文化人類学では特に大事だが、しかし文化人類学に限ったことではない)——それを実感を持って理解できれば授業の成果はあったことになると思う。 【学術分野】文化人類学 【授業形態】ゼミナール型(+フィールド型) 出席、報告および議論への貢献等の平常点と小論文とで判断する。 教科書は使用しない。 次の参考書を使用する。 書名 著者(訳者) 東京大学教養学部初年次ゼミナール文科運営委員会 書名 著者(訳者) 箭内匡 出版社 ISBN 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 木3 ―文芸映画から翻案映画へ 本誌「初年次ゼミナール文科の履修について」の頁を参照のこと。 【この授業の目標・概要】 映画は19世紀末にフランスで誕生して以来、先行する諸芸術から多くの要素を貪欲に取り込むことによって自らを豊かにし、発展していった。数ある芸術ジャンルの中でも、映画は、現実あるいは非現実の事象を再現し物語るという共通点を持つ小説から、ストーリー、構造、話法などの着想を得てきたという歴史があり、古典映画の時代から現代にいたるまで、小説を原作とする映画の例には枚挙にいとまがない。しかし、小説を原作とするいわゆる「文芸映画」は、映画と小説をめぐるこれまでの議論においては、安易な発想にもとづいた二次的な創作物として軽視されることが多かった。近年、ある種の「文芸映画」が「翻案映画」として見直され、映画と小説をめぐる生産的な議論が新たに生まれつつあるのは、オリジナル(原作小説)とそのコピー(映画)という二項的な枠組みによらず、翻案行為そのものに意義や創造性を見出そうとするアダプテーション論の興隆に負うところが大きい。 本演習では、映画と小説の関係を論じた映画論・表象文化論の古典として知られるアンドレ・バザンによる論考を読み進めた上で、現代のアダプテーション論にも目を向けつつ、映画と小説の双方向から「翻案映画」にアプローチしていく。「翻案映画」の分析を通じて、映画と小説それぞれのジャンル的特性を理解していくとともに、映画と小説のあいだに何を読み取ることができるのか、考えていきたい。 【学術分野】映像文化論・文学 【授業形態】ディシプリン型 文献批評型 出席、報告および議論への貢献等の平常点と小論文とで判断する。 次の教科書を使用する。 書名 『映画とは何か』上巻 著者(訳者) アンドレ・バザン(野崎歓、大原宣久、谷本道昭訳) 出版社 岩波書店 4003357817 ISBN 次の参考書を使用する。 書名 『読む、書く、考える ―東京大学初年次ゼミナール文科 共通テキスト―』 著者(訳者) 東京大学教養学部初年次ゼミナール文科運営委員会 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 初年次ゼミナール文科 31719 31720 授業の目標・概要 【共通目標】 成績評価方法 授業のキーワード 文化人類学、フィールドワーク、民族誌 教科書 参考書 ガイダンス 授業の目標・概要 【共通目標】 成績評価方法 授業のキーワード 映画、小説、文芸映画、翻案 教科書 参考書 ガイダンス 『読む、書く、考える ―東京大学初年次ゼミナール文科 共通テキスト―』 『イメージの人類学』 せりか書房 978-4796703734 45 120教室 119教室 時間割コード 曜限 講義題目 文化人類学の考え方 ―民族誌的想像力を養う― 映画と小説 担当教員 箭内 匡 谷本 道昭 教養教育高度化機構 所属 文化人類学 教室

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