2019Sシラバス
38/384

水4 本誌「初年次ゼミナール文科の履修について」の頁を参照のこと。 【この授業の目標・概要】 人文・社会科学を学ぶ上で最も基本的かつ重要な作業は、本や論文を読むということです。では本を読む、とは一体何をすることなのでしょうか。単に自身にとって利用価値の高い情報を入手することなのでしょうか。自身の人生にとっての教訓を見つけることなのでしょうか。あるいは筆者の主張を発見し、それを記憶することなのでしょうか。本授業では、本(テクスト)を読むという根本的作業の訓練を行います。具体的には、テクストを文脈(コンテクスト)の中に位置付け、そのコンテクストの中でテクストの意味や意図を読解するという作業の練習を行います。また、テクストがそれ固有のコンテクストを離れて別のコンテクストに置き換えられたとき、そのテクストがいかなる新たな意味を帯びるのか、について考えます。総じて、本を読むという作業は、多重に織り成されるコンテクストの中でテクストを創造的に読解することであるという姿勢を身に着けることを目標とします。 本授業では、以上のようなテクストとコンテクストが作る螺旋的連関を、国際関係論の古典であるE.H.カー『危機の二十年』(原著1939年)を通じて学びます。第二次大戦前夜から今日まで読み継がれている『危機の二十年』ですが、その読まれ方は果たして一様だったのでしょうか。読まれ方、解釈のされ方が時代によって異なっているとしたら、それは何故なのでしょうか。その解釈は、カー自身が込めた意味や意図と同じだったのでしょうか、あるいはどのように違っていたのでしょうか。なぜ、著者自身の意図と異なった読まれ方が許容されるのでしょうか。このような疑問に答えるため、カー自身のコンテクスト(そのテクストが書かれた政治的・文化的文脈やカーの知的経歴)や再コンテクスト化された状況(同時代や後年のアメリカ、日本においてどのように読まれたか)を押さえつつ、『危機の二十年』を読解していきます。 本授業は、主に歴史や政治思想史、国際関係論に関心のある学生を念頭に置いています。ただし限定はしません。 【学術分野】社会・社会思想史、国際関係 【授業形態】文献批評型 出席、報告および議論への知的貢献等の平常点と、小論文とで判断する。 *小論文については、授業期間内に本授業の内容を踏まえた小論文課題(Essay question)を提示する予定である。 教科書は使用しない。 書名 著者(訳者) E.H.カー(原彬久訳) 出版社 次の参考書を使用する。 書名 著者(訳者) 東京大学教養学部初年次ゼミナール文科運営委員会 書名 著者(訳者) ジョナサン・ハスラム(角田史幸他訳) 出版社 書名 著者(訳者) D.ロング/P.ウィルソン(宮本盛太郎他訳) 出版社 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 水4 本誌「初年次ゼミナール文科の履修について」の頁を参照のこと。 【この授業の目標・概要】 読めなければ、書けない。書けるから、読める――のだとすれば、まずは書くことではなく、読むことから始めるのが道理。日本の憲法学説史上、屈指の名論文として知られる、宮澤俊儀の「国民代表の概念」というテクストを読み抜くことを通じて、読むこと、書くこと、ついでに憲法学の入門まで果たしてしまおう、という本邦初公開(とまではいわないが、私としては初めて)の試みである。 【学術分野】法・政治 【授業形態】文献批評型 出席、報告および議論への貢献等の平常点と小論文とで判断する。 プリントを配布する。 書名 国民代表の観念 著者(訳者) 宮澤俊儀 その他 美濃部教授還暦記念『公法学の諸問題・第2巻』(有斐閣、1934年)所収 次の参考書を使用する。 書名 『読む、書く、考える ―東京大学初年次ゼミナール文科 共通テキスト―』 著者(訳者) 東京大学教養学部初年次ゼミナール文科運営委員会 転回期の政治 書名 著者(訳者) 宮澤俊儀 出版社 岩波文庫 第1回授業日に行う。ガイダンス教室については掲示板等で告知する。 初年次ゼミナール文科 31709 31710 授業の目標・概要 【共通目標】 授業の目標・概要 【共通目標】 成績評価方法 授業のキーワード テクストとコンテクストの連関、解釈の可変性、E.H.カー、『危機の二十年』、政治思想史、国際関係論 教科書 参考書 ガイダンス 成績評価方法 授業のキーワード 憲法 国民 代表 民主主義 権力 、法律学 政治学 社会学、政治史 思想史、転回期 教科書 参考書 ガイダンス 『危機の二十年 ―理想と現実—』 岩波書店(岩波文庫)、2011年 『読む、書く、考える ―東京大学初年次ゼミナール文科 共通テキスト―』 『誠実という悪徳 —E.H.カー、1892-1982—』 現代思潮新社、2007年 『危機の20年と思想家たち ―戦間期理想主義の再評価—』 ミネルヴァ書房、2002年 36 119教室 120教室 時間割コード 曜限 本(テクスト)を読む、とは何をすること なのか ―E.H.カー『危機の二十年』を題材に— 講義題目 ひと味ちがう☆憲法学入門 担当教員 馬路 智仁 石川 健治 所属 国際関係 法学部 教室

元のページ  ../index.html#38

このブックを見る